クリエイターの可能性を技術で最大化する。カバー×GMOペパボ、領域を超えた技術交流会レポート

カバー株式会社は、GMOペパボ株式会社様と共催で、オフライン形式の技術交流イベント「カバーとGMOペパボが語る、クリエイターの創作・表現活動を支える技術」を、2025年11月5日(水)に開催いたしました。

VTuber、ハンドメイド作家、配信者など、多様なクリエイターが新たな表現を追求する中で、それらを支えるエンジニアリングの役割は一層重要性を増しています。

本記事では、「クリエイターの創作・表現活動をいかに技術で支えるか」という共通のテーマのもと、両社のエンジニアが共有した具体的な「実践知」をレポートします!

イベントハイライト

本イベントは、GMOペパボ様からの共催のご提案を受け、実現に至りました。

弊社はハイエンドな3DCGやリアルタイム配信技術といったVTuber企業ならではの領域に強みを持ち、GMOペパボ様はWebサービスやECにおける強固なインフラ・アプリケーション技術に秀でています。得意とする技術領域は異なりますが、「クリエイターの可能性を技術で最大化する」という共通のミッションのもと、業界を超えた技術と文化の交流を目的として本イベントを企画いたしました。

開会

開会にあたり、カバーCTOの福田から開会挨拶がありました。カバーがこのような形で他社と合同でイベントを行うのは今回が初めてとなります。このような機会をくださったGMOペパボ様への感謝と、同じテーマで語らうことでお互いの技術を研磨し合えることを楽しみにしている旨をお伝えしました。

続いて、GMOペパボCTOの栗林様からご挨拶をいただきました。クリエイターを支えるという共通点から今回のイベントを企画したという経緯と、参加者全員でイベントを良いものにしようという熱いメッセージをいただきました。

カバーCTO福田による開会挨拶

GMOペパボCTO 栗林様によるご挨拶

ここからイベントスタートです!

イベントの中心となったのは、各社4名、計8名のエンジニアによるライトニングトーク(LT)セッションです。多岐にわたるプロダクトにおける技術的課題への取り組みとその解決策を、各社の精鋭エンジニアの皆様にご紹介いただきました!

カバーからのLTセッションについては登壇者から内容をご紹介し、GMOペパボ様からのLTセッションについては概要のレポートをお届けします。

カバー株式会社 セッションハイライト

手戻りの少ない開発を目指してスクラムでやっていること

MI〜NASAN!💀 クリエイティブ制作本部 技術開発部 第二開発チームの諏訪です!

タレントの皆さんが普段の配信で使っている「ホロライブアプリ」の開発プロジェクトは、スクラムというフレームワークを利用して進行しています。今回の登壇では、手戻りを少なくするということに着目した場合に、各スクラムイベントの中でチームがどういったことを意識しているかを発表させていただきました。

最も重要だと考えているのは、「完成したもの」と「欲しかった体験」がズレていないか、ということをスプリントレビューで確認することです。このときに、実際に動かせるアプリで確認をしないことには、レビューが不十分なままリリースされてしまうことになります。また、他のイベントの中でも、手戻りを抑えて作っていくために意識したいポイントを、チーム全員が抑えておくことが重要ということをお伝えしました。

技術ではなくPdM寄りの話でしたので、ご参加いただいた方に興味を持っていただけるかが不安でしたが、懇親会の中で好評いただき、またスクラムにも興味をもっていただけたことを嬉しく思いました。今後もこういった登壇で、より良いものづくりをしていくための仕組みづくりについても分かち合えたら素敵だなと考えています。

ホロライブアプリ」におけるOSCの活用方法

こんこんきーつね!🌽クリエイティブ制作本部 技術開発部 第二開発チームの清水です。

私は、タレントの皆様が日々配信に使用している配信用トラッキングアプリ「ホロライブアプリ」の開発をしています。今回のLT会では、ホロライブアプリにおけるOSCの活用方法を紹介させていただきました。

ホロライブアプリでは、iPhoneをキャプチャデバイスとして活用し、フェイストラッキングやボディトラッキングの情報を取得しています。取得したデータは、OSCという通信プロトコルを介してPC側のアプリにリアルタイムで送信されます。また、トラッキングデータに加えて、ギミックや表情切り替えといった各種イベントも、iPhoneやStream Deckなどの外部デバイスからOSCで制御可能であることをご紹介しました。

LT会後の懇親会にて、ペパボさんの社員様が、ユーザーがもっとおもしろいコンテンツを生み出すためにされている工夫や意識されている点を直接伺えたことは、貴重な経験になりました。この経験を今後の開発に活かそうと思います。

スタジオ3D配信用、デザイナー向けギミック実装ツールの紹介

ござる~🍃クリエイティブ制作本部 技術開発部 第一開発チームの堀家です!

本発表では、以前技術ブログでもご紹介した、スタジオ用3D配信アプリ内のオブジェクトの表示・色切り替えなどのギミックを、3Dデザイナー自身で作成可能にするためのツールについて、改めて詳しく紹介しました。

以前はエンジニアが担っていたギミック実装作業をデザイナーでもできるようにしました。これにより、デザイナーとエンジニア間のコミュニケーションコスト削減と、デザイナーの想定と異なる実装による手戻りの防止を狙いました。また、ツールの作成だけでなく、実際に活用し運用に乗せるためのワークフロー構築についてもご紹介しました。

懇親会では、同業のVTuber業界で活躍されているエンジニアの方と、現場が抱える共通の課題について意見交換ができました。さらに、専門分野が異なる方々とも、「どの範囲の作業をデザイナーに任せるか」といった共通の観点から活発な意見を交わすことができ、本勉強会のテーマに合致した大変有意義な時間となりました。

カバーの配信で利用されるShader – 「HoloToon」に関して

こんまっする~!⚔️クリエイティブ制作本部 技術開発部 アートエンジニアリングチームの門田です。

私は、日々の配信でタレントさんの描画表現に利用されるShaderの保守・開発をしています。今回のLT会では、同Shader「HoloToon」に関して紹介させていただきました。

スタジオでの配信やご自宅での配信、リアルライブなど環境が多岐に渡ることによる機能拡張時の懸念や、社外にゲストとしてお呼ばれする際などの「HoloToon」以外の環境での互換等も考慮するジレンマなどについてお話させていただきました。今後直近の方針としては、影やライティング周りの表現向上を目指して開発しています!

ペパボの皆さんの発表では専門分野外ながらも様々な工夫や取り組みをお聞きすることができ、またプレゼン自体も一方的にならない聞きやすい内容で、今後真似できればと感じました。登壇後の懇親会では同様に描画周りを担当されている方や、様々な分野の方と交流できる貴重な機会になりました。この度はありがとうございました。

GMOペパボ株式会社 セッションハイライト

ブラウザストレージを活用した配信画面デザインツール 「Alive Studio byGMOペパボ」の仕組みと設計について

配信画面デザインツール「Alive Studio byGMOペパボ」開発チームの永田さんからは、同ツールにおけるウェブ技術の活用例と設計思想についてご紹介いただきました。

「Alive Studio byGMOペパボ」は、OBS Studioのブラウザソース機能を活用し、プラグインではなくウェブアプリケーションとして実装されている点が技術的な特徴です。配信素材の操作画面と配信画面の同期にローカルストレージとストレージイベントを利用することで、ドキュメント間の同期を実現しているという技術的工夫をご紹介いただきました。

「配信をもっと手軽に楽しく」という設計思想のもと、既存のOBS設定に極力影響を与えずに機能を提供するという姿勢は、ユーザーのニーズに深く寄り添った設計であることが伺えました。

「minne byGMOペパボ」のショート動画基盤の設計と運用改善

ハンドメイドマーケット「minne byGMOペパボ」開発チームの湯村さんからは、同サービスの作品紹介ページにショート動画投稿機能を追加した際の技術的課題とその解決についてご紹介いただきました。

大規模な動画ファイルを扱うにあたり、S3へのPresigned URLを用いた直接アップロードを採用することで、サーバー負荷とコストの削減を実現されたことをご紹介いただきました。また、作品一覧画面など高い動画品質が要求されない場面では、CRF値を調整して動画品質を意図的に下げるという最適化により、表示速度とユーザー体験の向上を両立されているそうです。

技術的なアーキテクチャの最適化と、サービス利用時のユーザー体験向上を両立させている点が参考になる事例でした。

「SUZURI byGMOペパボ」の規約違反チェックにおけるクリエイタフィードバックの試行錯誤

ユーザーが提供する画像からTシャツ等のグッズを作成し、販売できるマーケットプレイスサービスである「SUZURI byGMOペパボ」開発チームの渡辺さんからは、規約違反デザインのAIチェック機能についてご紹介いただきました。

ユーザーがアップロードした画像と規約違反基準のプロンプトをLLMに入力し、規約に遵守しているかの判定を行う仕組みを導入したとのことです。リリース後、「どの部分を修正すればよいかユーザーに伝わらない」という課題に直面し、これに対して、Gemini 2.5から導入されたセグメンテーション機能を応用した解決策をご紹介いただきました。規約違反デザインに対し、LLMに規約違反箇所の描写を生成させ、それに基づきセグメンテーションタスクを実行することで、違反箇所をピンポイントで指し示しフィードバックする仕組みとのことです。

新しい技術を実際にプロダクトに導入した際の知見を聞くことができ、とても参考になりました。

Server-Driven UIでfrontendの複雑性に立ち向かう

ゲーム用マルチプレイサーバーが立てられるサービス「ロリポップ!for Gamers byGMOペパボ」開発チームリーダーの中田さんからは、Server-Driven UIの概要と、それを活用してフロントエンドのビジネスロジックの複雑化を回避した事例をご紹介いただきました。

「ロリポップ!for Gamers」では、ゲームのバージョンごとに設定項目が異なることによるフロントエンドのビジネスロジックの複雑化が課題となっていたとのことです。この課題に対し、サーバーからのレスポンスでUI構成要素を返すServer-Driven UIの設計思想が採用されました。その結果、フロントエンドのコードを大幅に削減し、UI/UXへの責務集中と、ゲームのアップデートに対する柔軟な対応を両立されました。

プロダクトの要件と課題に対し、最適な設計思想を選択し、効果的に実装されている点に非常に感銘を受けました。

懇親会の様子

LTセッション終了後には、軽食やドリンクを片手に交流会が開催されました。

会場では、LT登壇者を中心に、発表内容の詳細に関する活発な質問や議論が交わされました。また、同じ専門分野を持つ参加者同士の意見交換も盛んに行われ、新たなネットワークが構築される機会にもなり、盛り上がった時間となりました。

おわりに

本イベントは、VTuber領域とWeb/EC領域という異なるフィールドから、「クリエイターの創作・表現活動をいかに技術で支えるか」という共通のテーマを深く掘り下げることができた、非常に充実した時間となりました。

今回会場をご提供いただき、企画運営を主導いただいたGMOペパボ株式会社の皆様、ご登壇いただいたエンジニアの皆様、そしてご参加いただいた全ての皆様に心より感謝申し上げます。今回共有された実践知と、業界を超えた交流によって得られた技術的な示唆と学びは、今後のカバーのサービス開発においても貴重な財産となります。同時に、ご参加いただいた皆様にも、学びや気づきの機会となっていたら幸いです。カバー株式会社はこれからも、クリエイターの新たな表現を支える技術開発を推進してまいります。

本イベントの様子は、GMOペパボ様のテックブログおよび、GMOペパボ様の運営する配信業界向けメディア「ストリーマーマガジン byGMOペパボ」でも取り上げていただいております。

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