ホロライブの海外ブランチとして2020年に誕生し、東南アジアだけでなく日本、英語圏でも活躍するホロライブインドネシア(以下、ホロライブID)。2025年11月に5周年を記念したライブ公演、『hololive Indonesia 5th Anniversary LIVE Chromatic Future』(以下『Chromatic Future』)が開催されました。
この『Chromatic Future』はインドネシアのコンベンション「Comic Frontier」内で開催され、ホロライブIDの1期生から3期生までの総勢9人が集結したライブ公演を開催しました。 また、ライブ公演だけでなく、会場内ではホロライブIDの魅力を詰め込んだ特別展示エリア『hololive Indonesia Fan Festival』も展開されました。
今回は『Chromatic Future』を担当した海外事業開発室 International Event & Strategy(インターナショナルイベント&ストラテジー)チームに所属する、インドネシア出身のGさんに、公演の裏側やホロライブIDならではの特徴を話してもらいました!
グループの輪郭が明確になった『文化祭スペシャルライブ』
――まずはGさんの担当領域を教えてください。
私は今入社5年目なのですが、最初の4年間はホロライブIDの企画ディレクターとして働いていました。その後、2024年から海外事業開発室のインターナショナルイベント&ストラテジーを担当する部署に異動して、今は海外のイベント事業に関わっています。
――そのひとつとして、ホロライブID初の現地公演『Chromatic Future』も担当していますね。
『Chromatic Future』はホロライブIDの5周年プロジェクトとして、ライブ公演だけではなくポップアップストアやオンラインストア、当日の会場でのオフラインアクティビティなど、様々な施策を考えました。そのため、プロダクション企画本部、クリエイティブ制作本部、営業企画本部、コマース本部、海外事業開発室の各チームなど、関わる部署の数が本当に多いプロジェクトです。その中で、私は現地のコンサート実行や会場でのオフラインアクティベーション(展示ブース)などを中心に担当しました。
――5周年を記念した祭典として、色々な楽しみ方ができるものを目指したんですね。
そうなんです。そもそも、インドネシアのVTuberグループとして生まれたホロライブIDが5年間も続いてきたのはすごいことだと思っています。これはグループを好きでいてくれたり、関わってくれた色んな方々のおかげで達成できたことなので、信じてくれたファンの皆様には感謝を伝えたいです。5周年を迎え、ホロライブIDがVTuberのコミュニティや業界の中で自分たちの居場所を見つけられたことを嬉しく思います。
――ホロライブIDが生まれた2020年は、ホロライブEnglishもはじまっていない時期で、海外でのVTuber文化はまだまだ今のような規模感ではなかったように思います。
インドネシアのVTuberシーンにおいて、ホロライブインドネシアは決して先駆者(最初)だったわけではありません。先陣を切って道を切り拓いてきた先駆者たちの努力と勇気があったからこそ、ホロライブインドネシアはその最初の一歩を踏み出すことができたのです。
当時は日本でもまだVTuberという存在が黎明期にあり、その在り方が模索されていた時代だったので、インドネシアではさらにその傾向が強かったと思います。ですから、最初は「VTuberとは何なのか?」「ホロライブIDはどんな魅力のあるグループなのか?」を知ってもらうこと自体が大変でした。VTuberという新しいエンターテインメントの形態や、その実在感について説明する必要がありましたし、日本のアニメ人気が高いインドネシアでは「アニメキャラのような見た目なのに、日本語ではなくインドネシア語を話しているのはなぜか?」というインドネシアならではの意見をもらうこともありました。そこで、時間をかけてグループの自己紹介をしてきたのですが、最近になってようやくその段階を終えて、ちゃんとタレントさんそれぞれのスキルや魅力を見てもらえる段階に進めるようになったのかな、と感じています。
――5年間の中で、特に印象的だったことはありますか?
個人的には、まずはID1期生の3人が3Dで2022年に日本で行われた『hololive 3rd fes. Link Your Wish』で、初めてライブパフォーマンスを披露したことです。あれは初めて、国や地域を超えて多くの方にホロライブIDの魅力が伝わった瞬間だったのかな、と思います。そして2つ目は、タレントさん全員が3Dモデルを手に入れて、2024年のインドネシアの記念日に合わせて単独配信ライブ(文化祭スペシャルライブ)をしたことです。この時に、ホロライブIDがグループとしての結束が固まり、グループとしての輪郭が明確になったように感じました。
ホロライブIDの配信はインドネシア国内の方だけでなくホロライブJPやホロライブEnglishのファンの方々も視聴してくれているので、デビュー当初から視聴者の好みや背景が多岐にわたるという状況がありました。そのため、インドネシア国内のファンと海外のファンの両方に楽しんでもらうためにも、どうバランスを取ればいいかと苦労していたんです。やっぱり、それぞれの地域によって、魅力を感じるものやそのやり方は違ってきたりもしますから。
――なるほど。普段の配信でもインドネシア語や日本語、英語など様々な言語がミックスされているホロライブIDならではのお話かもしれませんね。
そんな中で、『文化祭スペシャルライブ』をした頃には、タレントさんそれぞれが自身の役割や絶妙なバランスを理解していて、グループとしてのまとまりを感じました。ホロライブIDの特徴でもある文化的な柔軟性には、ポジティブな面として「何にでもなれる」要素がありますが、一方で「自分たちのアイデンティティは何か?」を安定させるのがとても難しいという課題があります。これについてタレントさん、運営、ファンの皆様を含めたみんなで考えてきて、ようやくいいバランスを見つけられたことはとても印象的でした。現時点において、ホロライブIDの視聴者の一定数はインドネシア国外から応援してくださる海外ファンの皆様で構成されています。
「まるで友達の家に遊びに行く感覚」――ホロライブIDならではの魅力
――インドネシアでは、ホロライブIDはどんなふうに受け入れられているのでしょうか?
インドネシアにはもともと海外のカルチャーを柔軟に受け入れられる土壌があります。最近はオンラインで様々なコンテンツや情報に触れられる時代になり、日本だけでなく色々な国・地域のカルチャーへの興味がますます高まっています。以前から日本のアニメを楽しむ層は一定数存在していましたが、多くの人々が自宅で楽しめる新たなエンターテインメントを求めていた時期と重なり、その熱量がさらに急速に高まっていったんです。
ホロライブIDもその流れの中で色んな視聴者さんに見つけてもらいました。特に感じるのは、インドネシア国内の視聴者さんは「インドネシアのアイデンティティを見せてほしい」と期待してくれていることですね。言語やビジュアル、配信・動画コンテンツ、音楽など何でもよいので、「あなたたちはインドネシア出身だよ」ということを忘れないで活動してほしい、と期待されているんです。
実は「ここからホロライブIDを知りました」という人気コンテンツのひとつは、インドネシアの民謡のメドレーだったりします。それ以外にも、インドネシアの伝統的な衣装もありますし、その他の衣装でも、実はインドネシアの文化が少し加わっています。こうした企画は、私たち運営側だけが決めているのではなく、タレントさん達からも、「こんなことをしてみたい」と色々なアイデアを出してくれるおかげで実現しているんです。
ホロライブIDを多くの方に知っていただくきっかけとなった人気コンテンツ
――「アニメルックな見た目をしているのにインドネシア語で話すの?」と言われていた頃とは受け入れられ方が随分変わったんですね。
そうなんです。応援してくれているファンの皆様についても、最初はインドネシア国内のアニメ好きの方がほとんどでしたが、そこから配信者が好きな人たち、YouTubeでの動画・配信視聴が好きな人たち、と色々な方が見てくれるようになり、インドネシア国内でも、VTuberが決してニッチなものではなく、クリエイターとして認められてきているように感じます。その結果、最近ではインドネシア国内でコラボレーションさせていただいたPocky Indonesiaさんや、インドネシアにも店舗があるKaraoke Manekineko(カラオケまねきねこ)さんなど、大手のビジネスパートナーさんからも信頼をいただけるようになりました。VTuber自体の人気も、東南アジアの中で大きなものになってきていて、ホロライブIDに限らず、グループでも個人でも、みんなで成長し続けている雰囲気があり、VTuber自体が受け入れられやすくなってきていると思います。

――中でも、Gさんが感じるホロライブIDならではの魅力といいますと?
一番は、「誰に対しても分け隔てのない親しみやすさ」なのかな、と思います。もちろん、「可愛い」とか「歌が上手い」とか「メンバー同士の仲の良さ」など、ファンの皆様が好きになってくれる理由は様々ですが、ホロライブIDのタレントさん達は、多様な背景を持つ視聴者だけでなくホロライブIDメンバーやクリエイターさんに対しても、まるで友だちのような距離感でコミュニケーションできる雰囲気作りが特に長けていると感じます。日々の配信も友達のところに遊びに行くような感覚で楽しんでいただけているのかな、と。
グループにとって「大事な一歩」になった『Chromatic Future』
――2025年11月には5周年を記念した現地公演『hololive Indonesia 5th Anniversary LIVE Chromatic Future』が開催されました。この企画はどんなふうにはじまったものだったんでしょう?
『Chromatic Future』の公演タイトルには「華やかな未来を願いたい」という想いが込められています。「chromatic(=色とりどりの)」という言葉には、ホロライブIDが今までの5年間で経験してきた色んな感情も表現されています。ホロライブIDにさらにスポットライトを当てて、世界的にもより飛躍をしてもらいたいという思いから開催しました。
――チームの皆さんで特にこだわったところや工夫したところはありますか?
今回はカバーとしても新しい挑戦が色々とありました。今回はオフライン公演で初めてUnreal Engine※を活用しています。Unreal Engineでは雨や花火の表現をとても綺麗に表現できるので、ステージ演出などの面でも色々な可能性が広がったと思っています。
また、現地でのライブイベントで初めて9人全員が揃いました。コンサートは時間も限られているので、その中でどうやってタレントさんたちの個性が最大限に輝くよう見せられるのかについても、こだわっています。今回の公演はユニット曲が多かったのですが、それぞれのタレントさんのソロ曲もユニットで歌ってもらったのには、こうした思いがありました。
――限られた時間の中で、全員の魅力を最大限に伝えるための方法だったのですね。
結果的にすごく感動的な瞬間もたくさんあって…。たとえば1期生3人が土砂降りの雨の中でイオフィ(アイラニ・イオフィフティーン)さんのソロ曲『Here I am』を歌っているシーンはとても印象的でした。
それから、今回はこれまでも『hololive Meet』などで協力してもらっていたインドネシアのコンベンション「Comic Frontier」の中で公演を行い、公演以外にも『hololive Indonesia Fan Festival』という形で2日間にわたって特別なブースを出展させていただきました。ですから、ブースに関してはホロライブIDだけを目的に来たお客さんだけでなく、「Comic Frontier」を目当てに来たお客さんにも楽しんでいただけるようになっていました。こうした公演以外の要素も楽しんでもらえたと思っています。



――今回の公演では、大きなスポンサーさんもついてくださっていますね。
5周年ということで色々な企業さんにご協力いただきました。インドネシア現地での営業活動は日本と比べるとまだまだこれからですが、これまでの活動の中でスポンサー企業といい関係を築かせていただけており、信頼してもらえたことが嬉しいです。ホロライブIDができたばかりの頃は、「VTuberに案件をやらせてもらえる日が来るのかな……?」という状態だったので。
――部署を横断しての大掛かりなプロジェクトということもあり、チーム内での業務のオペレーション部分で意識したことはありますか?
今回はライブにあわせて、ホロライブインドネシア関連ブースゾーン『hololive Indonesia Fan Festival』や、タレントトークショーパネル『hololive Meet』などを行ないましたし、インドネシアや日本を筆頭に国や地域をまたいで多くの人々が関わるプロジェクトだったので、「お互いの認識を合わせる」ことを大切にしました。たとえば私たちインドネシア人が「当然こうだよね」と思っていることでも、他の地域の方にとっては当然ではなかったりします。そして、同じ意見を言っていても、その答えになった背景は違ったりすることも多々あります。スタッフの中にもそれぞれに色んな考え方や文化的な背景を持っている人たちがいますから、「これが普通」と思えるものも、一度は違うかもしれない可能性を考えて、チーム内で認識合わせをすることを大切にしました。別の企画になりますが、『hololive STAGE World Tour』などのワールドツアーで各地を回っていると、それぞれの地域で色々な違いが出てくるんですよ。
――インドネシア以外のイベント事業での経験も生きているのですね。今回の『Chromatic Future』はホロライブIDにとってどんな公演になったと思いますか?
グループにとって、すごく大事な一歩になったのかな、と思います。タレントさん全員がエンターテイナーとして成長して、9人で次のステージへと踏み出す姿を見せてくれたと感じています。私たちスタッフもファンの皆様も含めて、ホロライブIDだけのために、あんなにたくさんの人々が集まってくれたのは初めての経験でした。「ファンの皆様のおかげでホロライブIDはここまで来ることができました。一緒に次のステージに行きましょう!」という気持ちを込めた公演になりました。
――会場いっぱいのお客さんが全員で合唱している様子も印象的でした。
そうですね。約2年前、『hololive Meet』で初めてインドネシアでのオフラインイベントが行なわれた時はホロライブIDからは4人だけの出演でしたが、VTuberのオフラインコンサートでは、ファンの皆様も初めての経験で、どうやって楽しめば良いのか、まだ慣れていないような雰囲気でした。それが、去年の『hololive STAGE World Tour ’24 Soar! @ Jakarta』ではさらに盛り上がってくれるようになっていて、今回の『Chromatic Future』では本当にすごい熱量で盛り上がってくれました。
そんなふうに、タレントさんやスタッフだけではなくて、ファンの皆様も5年間を通して一緒に成長してきてくれたんです。今回の『Chromatic Future』は、そういう意味でもタレントさんとファンの皆様がみんなで5周年をお祝いするような公演になりました。

――現在、ホロライブプロダクションには大きく分けてホロライブ、ホロライブEnglish、ホロライブインドネシアの3つのグループがあります。様々なブランチの中で、ホロライブIDがグローバルでも活躍していくことについては、どんなふうに考えていますか?
ホロライブプロダクション全体としては、国内外を問わない企画が多く展開されていますが、日本国内のホロライブメンバーは「JP」とつけてはいないですし、ホロライブEnglishのタレントさんたちも地理的な場所ではなく「言語圏」でまとまっています。そんな中、ホロライブIDは「活動地域が限定されている」という印象を持たれがちかもしれませんが、実はそうではありません。
インドネシアの方々の大きな特徴の一つに、幼少期から複数の言語に触れて育ち、多様なカルチャーを受け入れやすい土壌があることが挙げられます。ホロライブIDのタレントさんたちも同様に、多文化への興味や理解を持っているからこそ、複数の言語を、配信や音楽活動に自在に活用できるレベルまで習得し、自身の芸術的な表現へと柔軟に取り入れることができるのです。
そのポテンシャルがあるからこそ、ホロライブIDはグローバル向けの柔軟性と、現地向けの柔軟性を適切なバランスで両立できているのかな、と思ったりしています。異なる文化や価値観を繋ぐ「ブリッジング(橋渡し)」の能力と適応能力の高さは、まさに国際的な活動に向いており、最大の強みだと考えています。
――最後に、ホロライブIDのこれからについても教えてください。GさんはホロライブIDがどんなグループになってくれたら嬉しいですか?
インドネシアという国は、人口が多くて規模自体は大きいものの、グローバルなエンターテインメントの中ではまだまだ存在感が大きいわけではありません。ですから、その橋渡し的な役割として、VTuber業界やグローバルなエンタメの中で信頼してもらえるような存在になれたら、とても素晴らしいことだと思います。インドネシアの方々だけでなく、色々な地域の方々にとって、ホロライブIDがそのような存在になっていってくれたら嬉しいです。そして、タレントさんたちには、それぞれにまだまだかなえたい夢ややりたいことがたくさんありますので、それを一緒に達成出来たらいいな、と思っています!

※UnrealおよびUnreal Engineは、アメリカ合衆国やその他の国々におけるEpic Games, Inc.の商標または登録商標です。
