2020年4月にホロライブプロダクションの東南アジアブランチとして誕生したVTuberグループ、ホロライブインドネシア(以下、ホロライブID)。グループの5周年を記念して、活動の拠点となるインドネシア国内で初の現地ライブ「hololive Indonesia 5th Anniversary LIVE Chromatic Future」が開催されました。
COVERedge(カバレッジ)では前編と後編の2回にわたって、ホロライブIDのこれまで、そして、インドネシア現地で開催された5周年記念ライブ開催の裏側やホロライブIDの立ち上げ時から発展と成長を最前線で支えてきた運営スタッフへのインタビューなどをお届けします!
前編となる今回は、社内でのヒアリングをもとに、ホロライブIDの誕生から現在までのグループの歴史についてまとめました。
データが導き出した「インドネシア流」。若者大国インドネシアから生まれ出たホロライブID

約17,000以上の島々からなる東南アジアの国・インドネシアは、国民の約半分が29歳以下である世界有数の「若者大国」として知られています。そのうえ、1980年代後半から日本の人気アニメや特撮が多数放送されていた背景もあり、アニメだけではなく日本のポップカルチャーへの認知度が高い国でもありました。また、国内だけでも700以上の言語が話される多言語国家であり、普段から多様な言語や文化に親しみのある国民性であることも知られています。
こうした背景を持つインドネシアで、ホロライブIDはホロライブプロダクション初の海外グループとして、2020年4月に1期生3名で活動をスタート。同年12月には2期生3名がデビューして個性的なタレントがさらに増え、ファンベースを拡大していきました。
2021年4月にはグループの1周年を記念して初のオリジナル曲『id:entity voices』を発表。この曲はインドネシアの作曲家・Farhan Sarasinさんが作曲/編曲を手掛け、グループのアイデンティティを表現するような楽曲になりました。同年8月には、1期生がホロライブID初となる新衣装での配信を実施。インドネシアの記念日に合わせてインドネシア風の新衣装をお披露目しました。また、2021年12月にはホロライブプロダクションの公式オンラインショップが大手オンラインマーケットプレイス・Tokopediaに進出して現地の方々へのグッズ販売も本格化するなど、活動のための環境が整っていったのがこの時期でした。
この時点では日本のアニメや文化を好きな視聴者さんを中心に楽しんでいただいている状態で、インドネシア国内での認知度はまだ限定的なものでした。しかし、1期生、2期生による地道な配信や活動によって徐々に認知が拡大。1期生のムーナ・ホシノヴァさんが東南アジア初のチャンネル登録者数100万人を突破した頃から、状況は大きく変わり始めます。
この頃になると、インドネシアでのインターネット文化の盛り上がりに応じて、VTuberは「アニメファン向けの目新しいコンテンツ」というだけでなく、生配信を行なう一人の「配信者」として認知されるようになりました。また、1期生、2期生の活動によってインドネシア国内で受け入れられやすいジャンルや音楽性などがデータとして蓄積されていったタイミングでもありました。
こうしたデータに基づき、2022年3月にデビューした3期生からは、オーディション手法やビジュアルにおいて、よりインドネシアの文化やトレンドを反映させた展開を行ってきました。その結果、3期生のこぼ・かなえるさんが、1期生のムーナ・ホシノヴァさん、2期生のクレイジー・オリーさんに続いてホロライブID最速となる、YouTubeチャンネル開設から約4ヶ月での登録者100万人を達成するなど、飛躍的に認知が広がりました。
また、2022年8月には、ホロライブID所属タレントの累計チャンネル登録者数700万人突破を記念し、ジャカルタ地下鉄(MRT)のセナヤン(Senayan)駅に記念広告を掲載。街中にもホロライブIDのタレントが登場し、現地の日常に溶け込む機会となりました。
インドネシアにおけるVTuberブームの隆盛と、これまでの世代が積み重ねてきた数々の挑戦は、音楽やゲームのジャンルからコミュニケーションスタイルに至るまで、インドネシアでどのようなコンテンツや活動が共感され、楽しまれるのかという重要な知見をもたらしました。この知見は、3期生のデビュープロジェクトのみならず、その後のオフラインイベントや現地でのプロモーションなど、その後のホロライブIDの意思決定に大きな影響を与えています。
2022年からは、年に一度日本で開催される「hololive SUPER EXPO & fes.」にもホロライブIDのタレントが出演するようになり、高い歌唱力やダンスパフォーマンスなどでも好評をいただきました。同年9月に、1期生の3名が3Dモデルのお披露目リレー配信を実施し、2023年にはアジアツアー「VRChat Presents viv:ID CRUISE hololive Meet Asia Tour」を実施するなど、活動の幅をさらに広げてきました。

「インドネシア文化」を大切に。独自のアイデンティティが生んだ魅力
では、ホロライブIDのタレントが、インドネシア国内や様々な地域のリスナーさんに受け入れられたのはなぜなのでしょうか?その理由はいくつか考えられます。
VTuberが世界的に支持される魅力として、タレント一人ひとりの豊かな個性があること、そして、視聴者との双方向なコミュニケーションの在り方が挙げられます。
ホロライブIDは、VTuber特有の魅力をインドネシアの言語や文化に即した形へと適合させています。特に、bahasa gaulと呼ばれるインドネシア特有のスラングや冗談を使って視聴者と互いにツッコミ合うような「プロレス的なコミュニケーション」が頻繁に生まれており、それが現地の視聴者との親密な距離感でのコミュニケーションを生んでいます。
また、ホロライブIDのメンバーには複数の言語を話すマルチリンガルなタレントが多く、配信中に多言語を自然に切り替える「コードスイッチング」と呼ばれる会話が行われています。そのため、インドネシア語圏はもちろん、日本や欧米のファンにとっても親しみやすく、地理的・言語的な境界が極めて曖昧なブランチとなっているのが特徴です。
こうした強みは、タレントの配信コンテンツやファンコミュニティ、そして何よりオリジナル楽曲に表れています。
音楽面において、こぼ・かなえるさんの「Oh! Asmara」やムーナ・ホシノヴァさんの「Perisai Jitu」などは、インドネシア・ポップスの特徴を巧みに取り入れています。これらの楽曲はインドネシア現地で高く評価されており、VTuberファンの枠を超えて音楽配信サービスの国内チャートを賑わせるほどの大ヒットを記録しています。一方で、英語や日本語、あるいは複数の言語をミックスした、グローバル市場をターゲットとする楽曲も次々とリリースしています。
地域に根ざした親しみやすさと、世界へ響く普遍性を両立させているのがホロライブIDの大きな特徴です。インドネシアならではの多様な言語・文化を背景にもち、世界と繋がる勇気と個性を持ち合わせたホロライブIDは、インドネシア国内に留まらず、日本や東アジア、北米まで幅広い地域へとファン層を拡大しており、プロダクション内でも多様性を誇るグループへと進化を遂げてきました。
その姿は、インドネシアで活動するあらゆるタレントにとって、グローバル進出の開拓者のような存在になっている側面があります。ホロライブIDがグループとして活動をはじめた当初は、アニメルックなキャラクターがインドネシア語を話すことに違和感を覚える一部の視聴者もいましたが、インドネシアならではの文化や価値観を大切にしつつ、国を問わず誰もがコンテンツを楽しめるよう継続してきた活動や努力こそが、現在のホロライブIDが放つ独自の魅力に繋がっているのかもしれません。
2023年以降は、リアルイベントや企業タイアップなども増加し、ますますグループの活動は多彩になりました。まず、2023年2月には所属タレント9名全員がリレー配信する形で着物新衣装のお披露目を実施。同年8月にはアジアツアーイベントとなる「VRChat Presents viv:ID CRUISE hololive Meet Asia Tour」を発表し、IDメンバー4名がインドネシア、シンガポール、マレーシア、ニューヨークでライブを行ないました。こうしたリアル会場での交流はますます増えており、2024年および2025年に開催されたホロライブプロダクションのワールドツアー、『hololive STAGE World Tour’24 -Soar!-』と『hololive STAGE World Tour ’25 -Synchronize!-』にもIDメンバーが出演し、グローバルな活躍を見せています。

インドネシア国内での企業とのタイアップやキャンペーン企画も好評をいただいています。もともとメンバーが配信で自然に名前を出していたインドネシア最大級の食品メーカー・Indofoodが提供する現地では定番のインスタント麺「インドミー」のプロモーション施策には、クレイジー・オリーさんとこぼ・かなえるさんが出演。従来のリスナー層を超えた様々な層の人々にVTuberの存在を伝えることとなりました。
また、インドネシアで人気のスクーター「Honda BeAT」のCMにこぼ・かなえるさんが起用。実写と3D表現が融合した映像はインドネシア以外でも話題となり、YouTube Works Awards 東南アジア 2025にノミネートされ、ブランド&クリエイター部門受賞しました。2025年には、インドネシア国内でのポッキーとのコラボレーションも実現。商品を購入することでホロライブIDのフォトカードがもらえる施策を行なうなど、現地企業との施策のみならず、国外企業のインドネシア市場へのプロモーションの役割も担当しています。
そして2025年11月には、グループの5周年を記念して、IDメンバー全員が出演したインドネシアで開催した全体ライブ「hololive Indonesia 5th Anniversary LIVE Chromatic Future」を開催。会場となった「COMIC FRONTIER 21 ICE BSD ホール6」に多くのリスナーさんが集い、大盛況の中グループ初の現地ライブを終えました。
スタートから5年を迎えた現在のホロライブIDは、音楽配信サービスの国内チャートでの成功や、タイアップによる企業との連携などを経て、インドネシア国内ではデジタルクリエイティブ産業における成功例のひとつとして、エンタメの領域を超えた社会現象として捉えられています。これからも、ホロライブプロダクション全体とより深く関わりながら、インドネシアを拠点としたさらなる活動の広がりを期待していただいているところです。
後編では、その大きな成果のひとつとなった「hololive Indonesia 5th Anniversary LIVE Chromatic Future」について、イベント担当スタッフのインタビューも交えながら、公演に込められたアイデアや想いをご紹介します!
※後編は近日公開