「一番輝ける場所」を一緒につくる。タレントマネージャーの仕事とは?

ホロライブプロダクションのタレントの配信で耳にする、「マネちゃん」「マネージャー」。
これは、カバー株式会社におけるタレントマネージャーのことを指しています。

カバーに限らず、芸能事務所などに存在するポジションですが、具体的にどのような仕事をしているのか、知らないことも多いのではないでしょうか。

特に、バラエティゆたかな才能を持つVTuberタレントたちを支えるカバーのマネージャーの業務は多岐に渡ります。タレントが目指したい夢を本人と追いかけるとともに、社内の各部署と協力して、その実現に向けたさまざまなプロジェクトをマネジメントする必要があります。

今回は、カバーのタレントマネジメント本部の本部長にインタビュー。

タレントマネージャーの業務内容や、今後の課題について、お話を伺いました。

※本記事における「マネージャー」とは、ホロライブプロダクション所属タレントの活動を最も近い場所で支え、夢の実現に向けて多角的なサポートを行う「タレントマネージャー」を指します。

ホロライブプロダクションのマネージャーとは?

ーーホロライブプロダクションにおいて、タレントマネージャーとは何をする仕事なのでしょうか?

一言で言えば、タレントが「一番輝ける場所」を共に創り上げ、活動を全力で支えるパートナーです。
一人ひとりの個性や強みを深く理解し、「次はどんな挑戦をすればリスナーさんに喜んでもらえるか」を一緒に考えたり、日々の活動におけるメンタルケアを行ったりと、歩幅を合わせて伴走します。また、タレントの「やりたい!」を形にするため、社内の専門部署と連携して企画を動かすプロジェクトマネジメントのような側面も持っています。

ホロライブプロダクションのタレントマネージャーならではの特徴は、タレント自身の「セルフプロデュース」を最大限に尊重する、という点です。 一般的な芸能マネジメントでは、事務所側が活動方針を主導するケースもありますが、ホロライブプロダクションのタレントは皆、自身の魅せ方を自ら考え、形にするクリエイターでもあります。そのため、マネージャーは「プロデューサー」として指示を出すのではなく、タレントが描くビジョンを形にするための、一番の理解者であり、誰よりも心強い現場の伴走者です。

また、外部への営業やPRについてはカバー社内の専門部署が担当するため、タレントと各部署をつなぐハブとなり、プロジェクトを成功へ導くことも多くあります。それがホロライブプロダクションにおけるマネージャーの役割です。

フルフレックス体制でタレントをサポート

──1日のスケジュールなど、具体的な仕事内容について教えてください。

マネージャーの仕事は、担当するタレントの活動スタイルによって多種多様です。そのため、特定の「決まったルーティン」というものは存在しません。
活動の要となる配信サポートや現場への同行など、サポートの形はタレント一人ひとりの個性に準じます。例えば、チャットツール等を用いたオンラインでの細やかな連携にて日々の自宅でのゲーム配信や雑談配信をサポートすることもあれば、外ロケやイベント出演が多いタレントの場合全国各地への同行サポートを行います。

また、3Dライブや有観客ライブを控えているタレントの場合には、共にレッスン場や会場へ足を運び、本番まで一番近くで見守ります。
このように、タレントが活動する時間も場所もそれぞれ異なるため、マネージャーは「フルフレックス制度」を活用し、自らのスケジュールを柔軟に組み立てています。「◯曜日はこの仕事」と固定するのではなく、タレントの活動サイクルに合わせ、常に最適なタイミングで最大限のバックアップができる体制を整えています。

──現在、タレントマネジメント本部には何名のマネージャーが所属していますか?

現在は約50〜60名のマネージャーが在籍しています。組織としては「hololive JPタレントマネジメント部」「hololive global部」「HOLOSTARSタレントマネジメント部」の3つに大きく分かれており、各部署の中に複数のチームが存在しています。
単に人数を増やすだけでなく、タレントの活動状況やプロジェクトの規模に応じて、柔軟に担当を振り分けています。個々のタレントの活動を、役割を分担した複数のマネージャーがチームで支える体制を導入しているケースもあり、組織全体で常に活動をバックアップできる体制を整えています。

──マネージャー1人につき、何名くらいのタレントさんを担当しているんですか?

現在は、マネージャー1人あたり平均2名のタレントを担当しています。
実はグループの初期段階では、1人のマネージャーが9名のタレントをサポートしていた時期もありました。しかし、担当人数が過多になると、一人ひとりの活動に対する十分なリソースの確保が難しくなります。タレントが最大限のパフォーマンスを発揮し、マネージャーも質の高いサポートに専念できる環境を構築するため、人員を大幅に増やして現在の体制へと改善中です。

現在は、直接タレントを支えるマネージャーをバックアップするために、「デスクマネージャー」や「制作進行マネージャー」といった専門チームも設けています。

「デスクマネージャー」は各マネージャーの業務負荷を可視化し、タレントへの連絡に抜け漏れがないようリマインドするなど、いわばマネージャーの伴走役を担っています。また「制作進行マネージャー」は、多岐にわたるコンテンツの工程管理を専門的に担うことで、マネージャーがよりタレント自身のケアやクリエイティブな相談に集中できる環境を作っています。

さらに今年度からは、部署全体の業務改善を専門に行う「タレントマネジメントコーディネーター」というポジションも新設しました。「タレントが常に安心して活動を続けられる状態」を何より大切にするために、まずはその一番近くで支えるマネージャーの業務改善を軸に、組織の土台を固めています。マネージャーが余裕を持ってタレントと向き合える環境を整えることが、結果としてタレントへのより手厚いサポートと、活動の安心感に直結すると考えています。

ブラックボックス化の解消に向けて

──営業部など、他部署と連携して行う仕事もあるとのことですが、具体的にはどのようにして連携しているのですか? 定例会議などがあるのでしょうか。

部署ごとの定例会議はもちろんですが、現在はタレント一人ひとりの想いや個性を齟齬なく全社に共有するため、「タレント情報データベース」の構築・活用を進めています。
タレントが目指している将来の夢や活動の方向性、さらには食べ物の好き嫌いに至るまで、細やかなプロフィールをリスト化し、権限に応じて社内の関係者がいつでも確認できる体制を整えています。

──食べ物の好き嫌いまで!

タレントによっては「食」をテーマにした配信を大切にされていますし、企業様からいただく差し入れや、お仕事でのメニュー提案などでも、苦手なものや食べられないものがあると、ベストなパフォーマンスに影響してしまいます。
一見、些細なことのように思えるかもしれません。しかし、そうした細部まで組織全体で把握し、配慮を徹底することが、タレントが心から心地よく、モチベーション高く活動できる環境づくりに直結すると信じています。

──データベースの作成やコーディネーターポジションの新設など、現在進行形でアップデートしている部分も多いんですね。

はい。正直に申し上げれば、組織の急成長に対し、タレントを支えるバックアップ体制の整備が追いついていなかったという強い反省が、これら一連の改善の背景にあります。
これまでホロライブプロダクションは、タレントとマネージャーが1対1の深い信頼関係を築き、密に連携することで成長してきました。しかし、その「密な関係性」の中だけで情報が完結してしまうと、活動の規模が広がるにつれ、組織全体での迅速なバックアップが難しくなるという課題も生じていました。
実際、タレントの体調管理や不測の事態において、情報の連携が遅れたことで「対応が遅い」という厳しいご意見をいただくこともありました。それは私たちも非常に重く受け止めています。「現場の熱意」に頼りすぎるあまり、一つの遅れがタレントの心身やプロジェクトに大きな負荷をかけてしまった。その「もっと早く組織が動けていれば」という後悔を、二度と繰り返してはならないと考えています。

現在取り組んでいる改革は、タレントとマネージャーの大切な信頼関係はそのままに、組織として協力すべき情報を「適切に可視化」していくことです。
守るべきプライバシーは厳重に管理しつつ、必要な情報をチームや専門部署へリアルタイムに共有できる仕組みを急ピッチで整えています。今回のデータベース化やコーディネーターの新設は、単なる効率化ではありません。タレントの状況を組織全体が正しく把握し、何かあれば即座に全員で守り、支え抜くための「決意」の形です。

──タレントマネジメント本部の本部長であるご自身は2024年に入社されたと聞いています。入社当時に感じた印象や課題はありますか?

入社してすぐ「プロフェッショナルの集まり」であり一人ひとりが非常に高い熱量を持って仕事に取り組んでいる印象を受けました。一方で、何か困難に直面した際、チームとして協力するよりも、個人の力で乗り越えようとする傾向も感じました。
もちろん、それは優秀な社員が揃っている証でもありますが、その個々の力がチームとして結集されれば、ホロライブプロダクションはタレントにとってもっと心強い場所になれるはずだと思いました。
そのためメンバーのマネジメントにあたっては、個人の知見を一人で抱え込まず、マネージャー同士が日常的に相談や情報共有を行える環境づくりを推進しています。困ったときに「チームで動く」ことが当たり前になることで、多角的な視点からタレントを支えられる体制へと進化しています。

何よりも、「誠実である」こと

──仕事をする上で、部として心がけていることはありますか?

メンバーには、関わるすべての人と「密にコミュニケーションを取ること」、そして「相手の立場に立ち続けること」の徹底を伝えています。
マネージャーの重要な役割の一つに、タレントと他部署の間に立って「想いを翻訳し、調整する」という仕事があります。 例えば、営業部から新たな案件や企画の提案があった際、その施策に対するファンの皆様の反響を、最前線で受け止めるのはタレント本人です。タレントは常にリスナーのことを第一に考えているからこそ、企画の意図や懸念点について非常に細やかに、真剣に向き合います。
一方で、営業部はプロジェクトを成功させ、数字としての成果を出すことがミッションです。それぞれの「守りたいもの」が異なるため、時には意見にズレが生じることもあります。
そこでマネージャーは、タレントのコンディションやリスナーへの想いを第一に守りつつ、同時に営業部側の目的も深く理解しなければなりません。単にどちらかの言い分を通すのではなく、双方が見据える「最高の形」を理解した上で、納得感のある折衷案や、より前向きに企画を実現できる方法を探り当てる。この誠実な調整こそが、マネージャーの果たすべき重大な役目だと考えています。

──マネージャーには、どのような人が向いているのでしょうか?

まず何よりも「誠実であること」が不可欠です。それと同時に、多くの人と人を繋ぐ役割ですから、相手の意図を汲み取り、対話を通じて物事を進めていけるコミュニケーション能力も非常に重要です。また、変化の激しい業界ですので、エンターテインメントに対する深い関心と、新しいことへの好奇心も欠かせません。
日々の活動の中では、前例のないことや予想外の出来事も数多く起こります。そうした場面で、指示を待つのではなく「タレントのために今、自分に何ができるか」を自ら考え、能動的に動ける方はこの仕事に非常に向いていると思います。
そのため採用面接では、これまでに困難な状況に直面した際、それをどう乗り越えてきたか、という点に重きを置いてお話を伺っています。単に問題を解決するだけでなく、逆境を糧にできるような「しなやかで力強いマインド」を持つ方こそが、タレントの活動を支え、共に未来を創っていくパートナーにふさわしいと考えています。

タレントの夢を「具体化」する

──これまでに、タレントマネージャーがタレントさんと成し遂げた具体的な出来事について教えてください。

あるタレントが「チャンネル登録者数や同時接続数をさらに伸ばしたい」という高い目標を掲げていた時のことが印象に残っています。その方は出来る限りの努力を積み重ねており、それ自体、並外れた精神力と才能がなければできない、素晴らしい努力でした。
ただ、その方の魅力をさらに多くの方へ届けるためには、がむしゃらな努力に加えて「戦略的な視点」が必要だとマネージャーは考えました。今のトレンドはどう変化しているのか、どんな切り抜き動画がきっかけで新しいリスナーに届くのかといった「分析と工夫」を掛け合わせることで、その方の努力をもっと効率的に成果へ結びつけられると判断したのです。
そこでマネージャーはタレントと真摯に向き合い、最新の市場動向を共にインプットする時間を設けました。その上で「数ヶ月後にはここまで届けよう」と具体的なステップを共有し、二人三脚で試行錯誤を繰り返した結果、着実に数字を伸ばしていくことができました。タレントの持つ「圧倒的な熱量」という原動力に、マネージャーが「地図」を添えることで、理想の形を具体化できた好例だと思います。

──客観的な視点でアドバイスした結果、数字が伸びたのですね。

そうですね。また別のタレントで「いつかソロライブを開催したい」という大きな夢を抱いている方がいました。
マネージャーはその想いをしっかりと受け止め、開催というゴールから逆算して「いつまでにオリジナル楽曲を何曲用意しよう」「MVはこのタイミングで公開しよう」といった具体的なロードマップを共に描きました。大きな夢であればあるほど、何から手をつければいいか迷ってしまうこともありますが、一つひとつのステップを明確にすることで、一歩ずつ着実に夢に近づき、最終的にソロライブという最高の舞台を実現することができました。

持続可能なリレーション構築に向けて

──タレントさんのことをより深く理解するために、意識していることはありますか?

2025年からは、谷郷社長をはじめとする経営メンバーがタレントと直接対話する「タレント面談」を定期的に実施しています。
これまでは、タレントの想いや現場の状況を、すべて担当マネージャー一人が受け止める形になっていました。マネージャーたちは非常に熱心にその声を吸い上げようと奔走してきましたが、一人の担当者を介する「点」でのコミュニケーションだけでは、タレントが抱く繊細なニュアンスや、経営層に直接ぶつけたい大きな熱意を、組織の隅々にまで100%の純度で共有しきることには限界がありました。
現場のマネージャーという「一番の理解者」とは別に、経営層とも直接繋がれる「もう一つの窓口」を設けることで、タレントのリアルな声を多角的に受け止め、組織全体でその想いをバックアップできる体制を整えています。

──面談してみて、気づいたことはありましたか?

改めて、所属タレントの皆さんは全員、驚くほど高いプロ意識を持たれていると感じています。
面談で語られるのは、「どうすればもっとリスナーさんに楽しんでもらえるか」「どうすれば新しいワクワクを届けられるか」という、ファンの方々への真っ直ぐな想いばかりです。 自分たちの活動がファンの支えによって成り立っていることを誰よりも理解し、常に「リスナーの皆様のために」と試行錯誤している。そんなタレントたちの真摯な姿勢に直接触れることで、私たち運営側も「この情熱を形にするために、組織一丸となって最高の環境を整えなければならない」と、改めて身が引き締まる思いでした。

──最後に、ホロライブプロダクションのマネージャーならではの特徴を教えてください。

もちろん、どの事務所もタレントを大切にされていると思いますが、私たちは「一人ひとりと徹底的に向き合うこと」の深さにおいて、どこにも負けない自負があります。
タレント自身の「セルフプロデュース」を尊重し、社内やタレントと濃い連携を行い、どうしたら形にできるかを泥臭く、真剣に考え抜く。それがホロライブプロダクションのマネージャーに共通するDNAです。
タレントが抱く夢は、決してどれ一つとして同じものではありません。その唯一無二の夢に対して、私たちも唯一無二のサポートで応えたい。タレントと関わっていただくたくさんの方々の「人の想い」を何よりも大切にすること。これこそが、私たちの最大の特徴であり、誇りです。

タレントが心の中でに大切にあたためている夢や目標を、どうすれば現実のものにできるか。それを一緒に分解し、具体的な「歩み方」に変えて隣で走り続けること。それこそが、ホロライブプロダクションにおけるマネージャーという仕事の本質なのだと感じています。

ーーありがとうございました。

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