2025年6月26日に発売された、アクションアドベンチャーゲーム『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』(通称:デススト2)。全世界累計プレイヤー数2,000万人を誇る『DEATH STRANDING』シリーズの、続編タイトルです。
前作に続き、今作にも監督・小島秀夫氏と繋がりをもった各界の著名人が「ゲストプレッパーズ」として多数出演しています。その1人が、ホロライブプロダクション所属の兎田ぺこらさん。ゲーム内への実装内容は、ゲストNPCとしての登場、ぺこらさんから届くメッセージ機能、親密度に応じて手に入るインゲームアイテム、プライベート・ルームで設定できる壁紙、フォトモードで使用できるフォトフレームなど、様々なシーンに登場します。
本稿では、コジマプロダクション・カバー両社の担当者が登場。一連の施策に込めた狙いや今だから話せる裏話など、さまざまなエピソードが飛び出した対談の様子をお届けします。
インタビュイー
株式会社コジマプロダクション/マーケティングチーム
カバー株式会社/ゲーム事業開発室 プロダクトチーム サブマネージャー
カバー株式会社/ゲーム事業開発室 事業グロースチーム
『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』について

“我々は繋ぐべきだったのか?”
人と人との繋がりを描いた感動の旅路は、UCAを越えた未知の荒野へと続いていた。
サムは人類を絶滅から救うために、仲間とともに新たな旅を始める。
荒廃した世界、立ちふさがる敵、混迷する謎。あらゆるものが使命の達成を阻もうとする。人と人との繋がりの向こうに、何があるのか?
比類なきゲームクリエイター小島秀夫が、ふたたび世界を変える。
PS Store:https://www.playstation.com/games/death-stranding-2-on-the-beach
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「普段の配信と同じ兎田ぺこらを見せたい」実装仕様を模索した1年
―まず、『デススト2』への兎田ぺこらさん出演のお話はいつごろから動き出していたんでしょうか?
2023年の夏ごろ、コジマプロダクションさんから最初にお話をいただきました。その後やりとりをしながら詳細を話し合っていき、同年の10月頃には、タレントマネジメントチームにも企画資料を見せられる段階になっていました。
―Yさんもその頃から関わられていたんですか?
私は2024年の夏ごろ、ぺこらさんの収録からプロジェクトに参加しました。2023年から動き出していたとは初耳です。
Yさんが参加されるまでの1年は、どうやってぺこらさんをゲーム内に登場させるか、そもそもLive2Dと3Dどちらのモデルが良いのかという所から、コジマプロダクションさんと検討していました。Live2D・3Dのサンプル映像をそれぞれ撮ってみて、それらをもとに「3Dが良さそうだ」という結論になりましたね。
ほかのゲストプレッパーズのみなさんの場合は、コジマプロダクションのスキャンルームで収録した3Dモデルを、細部調整して反映するという手法を取ることが多いです。ぺこらさんの場合、弊社としても実験的なことが多かったので、特にお時間をいただきましたね。

―出演仕様を決める段階から、入念に検証をしながら進めていったんですね。いざゲーム内実装を行うにあたって、2社間ではどのようなデータのやりとりがあったのでしょうか?
ぺこらさんの3Dモデルのサンプル映像を弊社のスタジオで撮影して、その動画を提出しました。その動画をゲームの世界観とマッチするようにコジマプロダクションさんが調整してくださって。
3Dモデルそのものでなく動画でお渡ししたのには、もちろん理由があります。コジマプロダクションさんからリクエストいただいたのが、「普段の配信で見られるようなぺこらさんを出したい」ということ。一方「デススト」側のシェーダーやエンジンはリアルテイストなものでつくられているので、そちらにもなじむ形を模索した結果、このような方法となりました。
プライベート・ルームの壁紙も、実際にゲーム内でみることができる配信背景風の壁紙とは別案で、ぺこらさんがバイクにまたがっているパターンも提案したんです。個人的には後者の方が好きでしたが、小島監督はやはり「普段の配信のような背景がいい」と。
それで、せっかくならと、ぺこらさんの『デススト1』のゲーム実況配信の際に、サムネイルイラストを手掛けてくださったイラストレーターのHikosanさん (@hikosan333)に担当いただきました。ぱっと見は普段の配信背景のような仕上がりですが、よく見ると、細部に「デススト」の要素が散りばめられているんです。ぜひ隅々まで見てみてください!

―コジマプロダクションのみなさんは、ぺこらさんの出演を受けていかがでしたか?
当初は、僕含めVTuberに詳しくないスタッフもいました。社内にホロライブのファンがいたので、みんなでその人に「どういうふうに出すのがいいだろう?」「どうしたらお互いのファンにとって違和感がないかな?」といったことを相談しに行っていたようですね。
そうだったんですね。ぺこらさんが話すセリフ台本はコジマプロダクションさんにご用意いただいて、弊社が監修する形だったんですが、「おそらくぺこらさんを好きな方が作ってくださっているんだろうな」という印象がありました(笑)。
ぺこらさんの話し方についても、そのスタッフの「ここはこういう風に言うんじゃない?」といった意見が反映されたそうです。そうしたやりとりを通して、他のスタッフもどんどんぺこらさんに詳しくなっていったようですね(笑)。
僕自身もVTuberのことを知るため、まずLive2Dのモデルを作ってみたんです。それを実際に動かしてみるうちに、物理的にできることやできないことはもちろん、VTuberの文化についてもかなり知ることができました。今や毎日チェックするエンタメ文化として、すっかり定着しちゃいましたね。
普段やらないことをやりたかった――前例のない施策の裏側
―プロモーション施策についてもおうかがいしたいです。露出としては、ぺこらさんによるコジマプロダクションへの訪問やゲリラでのティッシュ配り企画がSNSで話題を呼んだ後、3本の予告動画を経て、正式に出演告知という流れでした。
ぺこらさんの収録が我々の顔合わせも兼ねていて、プロモーションはその後徐々に話を進めていきましたね。
まずは弊社に集まっていただいて、ブレストを行いました。お互いが持ってきた案をホワイトボードに書き出しつつ、組み合わせていった形です。ただ大きな方向性は最初からそろっていて、「せっかくVTuberが絡むんだから、SNSで話題になりそうなストーリー性のあることをやりたいよね」という認識は両社共通で持っていました。

そこで収録の後、まずはぺこらさんがコジマプロダクションさんを訪問したことを明かし、「何かが起こりそうだぞ」と双方のファンに思っていただけるようにしました。さすがにゲーム内登場まで予想している人は、この段階ではあまりいませんでしたね。
当時の我々としては、ホロライブのファンのみなさんに「デススト」を知ってほしいという思いが強かったんです。そちらの方が訴求効果も高いと思いましたので、かなりホロライブファンを意識したご提案をしていた記憶があります。
ぺこらさんファンの方々は、ぺこらさんが出演するとなれば、「デススト」について興味を持ってくれるだろうという信頼感がありました。ですからリソースを割くならホロライブを箱推ししている方や、コジマプロダクションとVTuberのことをなんとなく知っているという方に届けるために、SNSに力を入れましょうという話をしましたね。
―その後、発売を間近に控えた2025年5月23日には品川、池袋、秋葉原でティッシュ配りが実施されました。配布されたポケットティッシュには二次元バーコードがプリントされていて、そこから予告動画が見られるという仕掛けが施されています。これらも先ほどのブレストで出ていたアイデアですか?
カバーから「何か配りたいです」という案は出していました。というのも、弊社に限らずVTuber全体の課題でもあるんですが、インターネット発のコンテンツなのでリアルの露出がどうしても弱いんです。せっかくいただいた機会だからこそ、普段のホロライブではあまりやらないアナログなことをやってみたくて。「ティッシュ」という案はコジマプロダクションさんからいただきました。
弊社も「せっかく配るならうちが一番やらなさそうなものを」と考えて、思いついたのがポケットティッシュでした。受け取るか受け取らないか選択することもできる、「デススト」のテーマに近しいものを感じたというのもあります。
この話を小島監督にプレゼンしたところ、「VTuberとのコラボを、あえてアナログのポケットティッシュで繋ぐ」という点に興味をもっていただき、ティッシュ配りの提案は一発OKでした。それに、ポケットティッシュ文化についても興味が出てきたようで、雑誌『anan(アンアン)』のコラム連載(※)にも、本企画について触れていただけました。
※「ゲームクリエイター小島秀夫のan‐an‐an、とっても大好き○○○○●」
―小島監督自らもティッシュを配っていて、目撃した人が続々とSNSで発信したほか、さまざまなメディアにも取り上げられました。
元々小島監督が配る予定はなかったんですけどね(笑)。また、自然な盛り上がりになったらいいなと思い、特に我々からメディアに声をかけるようなことはしていなかったんです。結果としてSNSでの話題から取り上げていただけて、ありがたかったですね。
ホロぐら特別回「ぺこ・ストランディング」 両社のこだわりが生んだ再現度の高さ
―6月29日には、ホロライブプロダクション公式YouTubeチャンネルで公開されている3Dアニメシリーズ「ホロぐら」(ホロのぐらふぃてぃ)にて、特別回「【アニメ】ぺこ・ストランディング」が投稿されました。こちらの制作についてもお話をうかがいたいです。
その節は本当に……。
いやいや、こちらこそ……。
―な、何があったのでしょうか?
通常のホロぐらの制作では、最初に台本からつくるんです。今回もその順番で、まずホロぐらチームから台本が上がってきたんですが……なんと言いますか、かなりはっちゃけた内容になっておりまして。ひとまずKからYさんに、「これ、大丈夫そうでしょうか」と相談したんです。「やり過ぎていたら、直しますので」と。
ホロぐらは普段からかなり尖ったコンテンツなので、「これぐらいやらないと!」というニュアンスでの提案だったんですよね。ここまでのプロモーション施策ではあえてVTuberらしくないことも積極的に取り入れていましたが、ホロぐらに関しては社内のコンテンツということもあって、ホロライブらしいことを思いっきりやるとしたらここだよねという話をしていたんです。ただ、さすがに……そのままOKはいただけない内容かなと思っていました(苦笑)。
弊社の開発チームに見せたのですが、さすがにストップがかかってしまう内容でした(笑)。少しだけ薄めていただくことになりました。
―はっちゃけていた台本の内容が気になる所ですが……。実際の映像では、オドラデクや荷物を落としたときのエフェクトなど、原作の再現度が非常に高いと感じました。コジマプロダクション側から素材提供などがあったのでしょうか?
「デススト」の素材をそのまま使用していただくのは難しかったので、お送りしたサンプルデータを参考に、カバーさんに3Dモデルを手作りしていただきました。ここが先ほど私が謝りたかった所なんですが、かなり細部まで監修させていただいたので、ブラッシュアップでお時間を取らせてしまったんですよね。
もっとも、ホロぐらチームのみなさんがものすごくクオリティーの高いものを作ろうとしてくださっていたからこそ、弊社もそれにお応えしなければ!という思いがありました。
―実際にどのような監修とブラッシュアップがあったのでしょうか?
これは私からの監修ですが、オドラデクの開閉部分の角度についてコメントさせていただきました。内側の機構なのでそこまで気にしなくても良いんですが、見る人が見たらわかってしまう部分ですから。
他にもさまざまな仕掛けがあります。ホロぐらに登場する地図はゲーム内の地図をそのまま使っているんですが、気づいている人があまりいなくて。
荷物の柄の青いところ、ズームしてよく見ると「ホロライブプロダクション」と書いてあるんですよ。
登場しているタレントも、配信で『デススト1』をクリアしたことがある人をキャスティングしています。この点は気づいている人も多かったですね。
▼ホロぐら内にでてくる小ネタの数々
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▼ホロぐらラフ
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海外のインプレッション650%増 “つながり”が生んだ感動とリーチ効果
―最後に、今回のコラボの手ごたえを教えてください。
今回に関しては、コジマプロダクションさんの海外圏に対する強さを改めて感じました。「The Game Awards」のクリエイター部門にぺこらさんがノミネートされていたこともあり、海外の方は“VTuber”というより“一人の著名人”として受け入れてくださったのかなと思います。良い意味でVTuberという背景にしばられず、その垣根を越えて実現できたのが一番よかったと感じています。
国内のインプレッションを見てみると、他の同規模コラボと同じくらいではあるんです。ただ海外は650%もアップしていました。ホロぐらに関しても、海外コメントが60%アップ。これらは弊社にとって非常にうれしい結果でした。
またコジマプロダクションさんに対しても、「デススト」関連の投稿のうち、28%がぺこらさんの関連ワードを使用して投稿されています。きちんとうちのバリューを出せたポイントかなと思います。
特に意識していたのは、既存ファンにも満足していただき、初めての人にはポジティブな興味を持っていただけるような出演になることです。ファーストのルックであまり異質な存在感が出ないようにして、まずは「デススト」の世界観に自然になじませていただく。その上でクエストを進めていけば、ぺこらさんの帽子をもらえたり、曲をもらえたりと、ファンもうれしい要素がたくさん出てきます。
プロモーションに関しては、発表前はコジマプロダクションさんとのつながりが伝わる文脈作りを、発表後はホロぐらを通してぺこらさんファンへの訴求を意識していました。今回は会社同士というより、小島秀夫監督というクリエイターと兎田ぺこらというクリエイターがたまたまつながった所からスタートした話だったので、双方のファンとしても納得感あるものにできたのかなと思います。カバーとしてもかなりの多くのクリエイティブを作らせていただいて、珍しい事例となりました。
我々の本音としては、VTuberさんに出演いただくのは初めてだったので、ネガティブな影響があるのではという不安もあったんです。でも、結果的に新しいファンの方々との繋がりを築くことができた。
コジマプロダクションのYouTubeチャンネルで『デススト2』に関する動画を投稿しているんですが、先日ぺこらさんにフィーチャーした動画を上げさせていただきました。こちらもものすごく反響がありましたし、SNSの投稿には野うさぎキャップを装備したスクリーンショットが大量にリプライされていました。「デススト」ファンにとっても、しっかり馴染みのあるキャラクターになっています。
小島監督もイベントで話していましたが、一度つながったものは、簡単に切れることはありません。今回のプロジェクトで生まれたつながりも、同じで、これからどれだけ深めていけるかだと思います。今後もぺこらさんやカバーの皆さんと何かご一緒できるならば、今回以上に面白いことをやりたいですね(笑)。
まとめ
「デススト」シリーズでも大切にされている、人と人とのつながり。今回は小島監督・ぺこらさんを通してつながったコジマプロダクション・カバーの共創によって、双方のファンに新たな感動と体験がもたらされました。両社の仕掛け人たちのクリエイティビティと情熱が、次の新たな共創のきっかけとなることを期待します。

【『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』商品情報】

“我々は繋ぐべきだったのか?”
人と人との繋がりを描いた感動の旅路は、UCAを越えた未知の荒野へと続いていた。
サムは人類を絶滅から救うために、仲間とともに新たな旅を始める。
荒廃した世界、立ちふさがる敵、混迷する謎。あらゆるものが使命の達成を阻もうとする。人と人との繋がりの向こうに、何があるのか?
比類なきゲームクリエイター小島秀夫が、ふたたび世界を変える。
◆商品概要
ゲームタイトル: DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH
プラットフォーム: PlayStation®5
発売日: 2025年6月26日(現地時間)
CERO: D(17才以上対象)
PS Store:https://www.playstation.com/games/death-stranding-2-on-the-beach
©2025 KOJIMA PRODUCTIONS Co., Ltd. /HIDEO KOJIMA. Produced by Sony Interactive Entertainment Inc.
※”PlayStation””プレイステーション”および”PS5″は株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメントの登録商標または商標です。
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