3月にお届けした谷郷元昭CEOのインタビューから半年、9月7日の「hololive Next」では、ホロライブプロダクションの10周年に向けた発表とともに、これまで地域やグループごとに用いてきた区分を、「ホロライブ」として統合する方針をお伝えしました。
名称や届け方が変わることで、タレントやファンの皆さんが積み上げてきたものはどうなるのか。今回の判断は、これまでを消すためではなく、その歩みをより広く未来につなげるためのものだと谷郷CEOは語ります。発表後に寄せられた声も踏まえ、統合の背景、これからのデビュー、hololive DEV_ISという挑戦、そしてホロライブインドネシア/ホロライブEnglishを応援してくださっている皆さんへの思いを聞きました。
なぜ、いま「ホロライブ」をひとつにするのか
――9月7日の「hololive Next」で、これまで地域やグループごとに設けていた区分を、「ホロライブ」として統合すると発表しました。まず、この判断の背景を教えてください。
発表後、本当にたくさんの声をいただきました。期待してくださる声も、心配や寂しさを伝えてくださる声も、厳しいご意見もあったと感じています。
これまでホロライブは、日本からはじまり、インドネシア、英語圏へと言語や地域ごとにグループを設けて活動の幅を広げ、それぞれの地域や言語に根ざした形でコンテンツを提供してきました。また、言語以外にも、ユニットという単位で「挑戦」と「成長」をテーマに掲げたDEV_ISを立ち上げ、様々な形を通じて「ホロライブ」の活動を届けてきました。
タレントとファンの皆さんと一緒になって、ここまでコミュニティを育んでこれたことは、現在のホロライブの大切な土台であることは間違いありません。
一方で、活動の規模が大きくなるにつれて、区分が分かれていること自体が、私たちにとって障壁のようになってしまった部分もありました。活動の方針、コンテンツの届け方、企画におけるタレント同士の組み合わせ、そして会社としての制作・運営の知見。そのどれもが、グループの枠の内側に留まりやすくなっていました。
当社のミッションは「つくろう。世界が愛するカルチャーを。」です。その続きには、「国境を超え、世代さえも超えて」とありますが、世界が愛するカルチャーとは、国境を超え、世代さえも超えて届いていくものだと考えています。ホロライブのその先を見据えたとき、地域やグループの境界を超えてVTuberを広めていきたいという思いがあります。
皆さんや私たちにとっても、ホロライブも、ホロライブインドネシアも、ホロライブEnglishも、そしてhololive DEV_ISも、そのどれもがホロライブです。どこかが、どこかに吸収されるという話ではありません。そのすべてを、ひとつの——ある意味で新しいともいえる「ホロライブ」として、あらためてスタートする。今回の統合は、そういう決断です。
――名称や区分が変わることで、これまでの活動まで変わってしまうのでは、という不安もあります。
そこは、もっと丁寧にお伝えしなければならなかった点であり、こういった場でお伝えしたかったことの1つです。名称や情報の届け方は変わりますが、タレント一人ひとりの個性や、これまでの活動で積み上げてきた歩みがリセットされるわけではありません。ファンの皆さんが育ててくださった文化やつながりも同じです。
今回の統合は、これまでを消したり何かを小さくするためではなく、積み上げてきたものを、より広く未来につなげるためのものです。これまでの運営で得た知見や支援の幅を全体に広げ、より今後のタレント活動の選択肢になるという想いを込めています。
まず、この考え方を私たちの出発点としてお伝えしたいと思います。

これからの「デビュー」のかたち
――そして、ホロライブに新ユニット「アソビ★まわり隊!」のデビューが控えています。「何期生なのか」という質問も多く見られます。
ここも、この機会にきちんとお話ししておきたいところです。
私たちはこれからも、デビューを「◯期生」のような呼び方ではなく「ユニット」でお届けしていきます。
これは今回の統合に合わせて決めたことではなく、秘密結社holoXやholoh3roのデビュー以降はすべて、ユニットとしてのデビューを行ってきました。
――その理由はなんでしょうか?
いつどこでだれが何をきっかけに、どの入口から入っても、そこがその人の入口であり、その人の「ホロライブ」になる。自分のオリジナルな体験を積み上げて、楽しみが広がっていく。私たちが目指したいのは、そういう形です。
今後も長くプロダクションを運営するうえで、「◯期生」という連番が続いていくことは、「0から順番に追わないといけないのかな」という印象を与え、これから好きになってくださる方の入り口を、私たち自身が狭くしてしまうのではないか、と考えるようになりました。
ユニット名でお届けすれば、比較の軸は「いつから知っているか」ではなく、「どの世界観が好きか」になります。
そのため、7期生や8期生、9期生と、今後「◯期生」で続くことはありません。
もちろん、これまでの「◯期生」という愛称を変えるわけでもありませんし、先輩たちが積み上げてきたものを受け継いで、次の世代が出てくるという流れも変わりません。
たとえば、秘密結社holoX、ReGLOSS、FLOW GLOWと続く日本語話者によるユニットの流れがあり、その後輩として「アソビ★まわり隊!」が加わります。
新しい仲間は、どこかから突然現れるわけではありません。9年間、先輩たちが築いてきたホロライブという場所があって、そこに次の世代が加わっていく。その意味で、これからのデビューも、これまでの延長線上にあります。
DEV_ISという挑戦が積み上げたもの
――今回の統合で、DEV_ISという枠組みもホロライブへ一本化されます。
DEV_ISは、冒頭でお伝えした通り、「挑戦」と「成長」をテーマに立ち上げたグループです。ユニットという単位で、新しい届け方に挑む。会社として初めて取り組むことも多く、運営の面でも、届け方の面でも、私たちに改善すべき点はありました。それでも、応援してくださった皆さんをはじめ、多くの方の力を借りて、ここまで来ることができた。そう思っています。
何より、私たちは本当に個性、そして魅力あるタレントたちに恵まれました。一人ひとりがホロライブに新たな道を切り拓き、会社の想定を超える魅力と可能性を見せてくれた。その姿に、私たち自身が圧倒されてきました。
そして、これまでホロライブに触れたことのなかった方に、新しい入口をつくることができたと感じています。ユニットという単位が敷居を下げて、「ここから知る」という入り方として機能しました。これは、DEV_ISという枠組みがあり、そこに彼女たちがいたからこそ生まれたものです。
私たち自身も、ひとつのコンセプトに絞って挑んだことで、応援してくださる方と一緒に成長していく運営のかたちを学んできました。どうコンテンツをつくり、どう見ていただき、どう応援していただくか。DEV_ISで重ねてきた時間が、次のホロライブの土台になる。私たちはそう考えています。
――今回の統合は、その挑戦を終わらせるということでしょうか。
逆です。彼女たちの力を、その挑戦の可能性をもっと伸ばすための統合です。
私たちにとっても大きな試みだったことは間違いないですが、この挑戦の意義が失われるものではありません。
ユニットごとの公式YouTubeチャンネルの運用も継続しますし、これまでDEV_ISの中で積み上げてきたユニット運営の知見は、引き続き彼女たちのユニット運営に活かします。このユニット、そして彼女たちの魅力に加えて、「ホロライブ」の一員として、より大きな舞台を目指してもらう。そのための一歩であると思っています。
またユニット運営の知見は、今後デビューするタレントにも、場合によっては既に活動しているタレントにも生かしていきます。DEV_ISで得たものを、その枠の中だけで完結させるのではなく、ホロライブへ広げていくことも大きなテーマです。
――「DEV_IS」という名前がなくなることを、寂しく感じるファンもいます。
その気持ちは、当然のことだと思います。名称という器が変わることと、その中で生まれたものがなくなることは、別のことです。
今回の判断をしたのは、私たちです。この決定で、タレントにも、応援してくださっている皆さんにも、割り切れない思いをさせてしまった部分があると受け止めています。
しかし、ReGLOSSとFLOW GLOWの一人ひとりが歩いてきた道のりも、ユニットとしてつくってきたものも、決して消えません。DEV_ISという枠組みではなく、DEV_ISという経験をもったユニットとして、これまでの歩みをホロライブの歩みに受け継いで、もっと多くの方に、もっと大きな場所で届けていきたいと思っています。
ホロライブインドネシア/ホロライブEnglishを応援してくださっている皆さんへ
――これまでホロライブインドネシア、ホロライブEnglishを応援してきた方々からは、特に大きな反応がありました。
はい。この点についても、賛否の両方があることは理解しています。皆さんのご意見を軽く扱うつもりはありません。
IDやENという単位があったからこそ、「IDのみんな」「ENのみんな」として応援してくださった方がたくさんいらっしゃいます。それは会社が用意した区分というだけではなく、タレントとファンの皆さんが時間をかけて育ててきたコミュニティであり、文化です。
名称や区分に積み重ねてきた思いがあることは、座談会や個別面談、YAGOOお茶会など、タレントとの対話を通じても強く感じています。名前が変わったからといって、そこで生まれた記憶やつながりを、会社が「なくなったこと」にすることはできません。むしろ、そう思っているからこそ、この統合の話についてはタレントの皆さんに向けて何度も説明の場を設けながら、いただいた意見に丁寧に向き合ってきました。
だからこそ、はっきり申し上げておきたいことがあります。
今回の判断は、海外の活動を区切るためのものではありません。今後も力を入れて展開する上での準備であり、変革です。
これまで海外のグループは、それぞれの地域の中で完結しやすい構造にありました。日本で大きな企画が動いても、そこに海外のタレントが入る前提になっていないことがある。海外で育ったコミュニティに、日本の制作リソースが十分に届かないこともある。私たちは、その構造のほうを変えるべきだと考えました。
これからは、ライブやイベント、音楽、グッズ、アニメといったホロライブの大きな取り組みに、地域に関係なくタレントが加わりやすくなります。逆に、海外で積み上げてきた文化や強みを、ホロライブ全体に持ち込むこともできます。
大切に思っているからこそ、いまの構造のままにしておきたくなかったというのが私たちの思いであり、いちばん正直なところです。

――具体的には、何が変わり、何が変わらないのでしょうか。
公式YouTubeチャンネルやXアカウントは、番組で発表があったように継続します。それぞれの言語で情報を届けることをやめるものでもありません。
変わるのは、「どのチャンネルから、誰に向けて届けるか」という考え方です。これまでは、出演するタレントがどの地域の区分に所属しているかを軸にしていました。これからは、受け取ってくださる方がどの言語で情報を受け取りたいかを軸にしていきます。
地域に根ざして育ってきたコミュニティを大切にすることと、地域を超えて広がっていくことは、どちらか一方を選ぶ話ではありません。日本語の配信を英語圏の方が見てくださり、インドネシアの配信を別の地域の方が追いかけてくださるように、ファンの皆さんはすでに境界を超えてホロライブを楽しんでくださっています。
私たちが目指しているのは、海外での活動を小さくすることではありません。「ホロライブ」というひとつの看板のもとで、言語や地域を超えて、タレントの活動機会とコンテンツの届け方を広げていくことです。
――それでも、不安がすぐになくなるわけではありません。
その通りだと思います。慣れ親しんだ形と違うものが出てくる場面は、これからあるはずです。それを「何も変わりません」と申し上げるのは、誠実ではありません。
しかし、葛藤していたのは、これを単に「変わる」と言い切ってしまうのも、少し違うという点です。今回の発表は、結果ではなく過程です。終わりの話ではなく、次に進むための話です。
いま申し上げられることには限りがありますが、お話しできるようになったことは、今後の展開として、タレントの配信や次回以降の「hololive Next」でも、お伝えしていきます。
皆さんが応援してくださっているタレントが、これまでより様々な場所で、より大きな挑戦をしていく。その姿を、これからお見せしていきたい。
そして、「ホロライブ」のその次を、皆さんと一緒に発展させていきたいと考えています。
10周年へ、この1年で示していくこと
――最後に、10周年に向けて、この1年で何を示していきますか。
10周年まで、あと1年を切りました。
「hololive Next」という名前には、次の10年へ進んでいくという意味を込めています。番組の名前であると同時に、この1年でホロライブがどこへ向かうのかを示す言葉として使っていきたいと思っています。
――「Next」に込めた意味を、もう少し聞かせてください。
ひとつは、成長です。DEV_ISが掲げた「挑戦」と「成長」を、これからはホロライブ全体のテーマとして引き受けていきます。
ふたつめは、進化です。タレントが地域や言語にかかわらず活躍できる場所をつくる。ここは、この1年でいちばん形にしていきたいところです。
そしてもうひとつは、次の世代です。新しいユニットを迎え、先輩たちが積み上げてきたものを受け継いでもらう。9年間で築いたものの上に、次の10年を重ねていきます。
――番組という形で発信を始めた理由も、そこにありますか。
はい。決まったことだけをお知らせするのではなく、なぜそう考えたのかまで含めて、私自身の言葉でお伝えしていきたいと思い、今回の発表はこのような形式で行いました。今後も、10周年に向けた新しい企画や情報など、皆さんが楽しみにできる情報をお知らせしていきます。
――最後に、メッセージを。
今回の「hololive Next」では、一度に多くのことをお伝えしました。その分、戸惑わせてしまった部分もあったかもしれませんが、伝え方も含めて振り返ったうえで、次の発信に活かしたいと思います。
そのうえで、大切なのは、「今回の発表をしたこと」ではなく、「その先に何を生み出せるか」だと考えています。タレントたちの活躍、言語や地域を超えて届くコンテンツ、これからの活動の広がりを、順にお見せしていければと考えています。
ひとつになった新しいホロライブ、そしてホロライブプロダクションは、タレントと、支えてくださる皆さんと、一緒につくってきたものです。変えていくものと、変えてはいけないものを、その都度お伝えしながら”次へ”進んでいきます。
次の10年へ。共に歩む未来のために。
引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。