
「ホロライブプロダクション」を運営するカバー株式会社。昨年は現地動員数1万人を超える大規模ライブを次々と成功させ、エンターテイメント業界で大きな注目を集めています。
その舞台裏を支えている1人が、ライブイベントのプロジェクトマネージャー(ライブPM)として活躍するTさんです。新卒で楽天株式会社(現:楽天グループ株式会社)に入社し、20代後半でカバーに転職したTさんは、業界未経験ながらわずか半年で3つのライブを手がけ、VTuberライブの新たな可能性に挑戦し続けています。
今回はそんなTさんに、ライブPMの仕事内容をはじめ、未経験でも活躍できたワケ、VTuberライブの魅力と可能性について伺いました。
知識ゼロからアリーナクラスのライブ運営へ挑戦
ーTさんは現在、ライブのプロジェクトマネージャーとして活躍されていますが、これまでのキャリアについて教えていただけますか?
2019年に楽天へ新卒入社し、楽天モバイルの経営企画室からキャリアをスタートしました。入社当初は新サービス展開の戦略構築や、中長期コストシミュレーションの策定などに携わり、プロジェクトマネジメント業務を経験しました。その後、楽天グループ全社横断のコスト削減プロジェクトを担当し、2024年5月にカバーへ転職しました。

ーカバー入社後、わずか半年で3つのライブを担当されたとのことですが、具体的な業務内容についてお話いただけますか?
私は経営企画室 業務企画チームに所属し、部署横断プロジェクト推進役として、有観客ライブのプロジェクトマネージャー(以下、ライブPM)の業務にあたっています。ライブ事業そのものはライブ運営部という部署が担っており、私はそのサポート役という位置づけです。
具体的な業務内容としては、ライブを構成する様々な要素の決定と情報発信のとりまとめ、収支管理、会場運営の準備と実行などに取り組んでいます。多くのファンが盛り上がるライブ制作を推進しながら、ビジネスとして成立させるために収支バランスをコントロールすることがライブPMのミッションです。
ーライブPMとして手がけられたライブについて教えてください。また、初めて携わったライブで印象に残っているエピソードはありますか?
2024年10月に開催した『さくらみこ1st Live “flower fantasista!”』にて初めてライブ運営に携わり、11-12月の間に開催された『Hoshimachi Suisei Live Tour 2024 “Spectra of Nova”』、そして12月に『宝鐘マリン1stライブ「Ahoy!! キミたちみんなパイレーツ♡」』を担当しました。
(現地動員数)
『さくらみこ1st Live “flower fantasista!”』(有明アリーナ): 1万人
『Hoshimachi Suisei Live Tour 2024 “Spectra of Nova”』(さいたまスーパーアリーナを含む国内3ヵ所):ツアー合計2.4万人
『宝鐘マリン1stライブ「Ahoy!! キミたちみんなパイレーツ♡」』(Kアリーナ横浜 2日開催):3.5万人

最初のプロジェクトでは、チケット販売やライブ会場の当日運営にまつわる業務を担当したのですが、そもそも会場図面の読み方がわからないレベルで、ゼロ知識からのスタートとなりました。ファンにライブを楽しんでいただくための客席の配置、当日のスムーズな入場導線など、初めて取り組む業務がほとんどの状況で、四苦八苦しながら準備をしました。
本番当日は、万全な準備をしていたものの、緊張感・ドタバタ具合は想定以上でした・・・!ファンの待機状況や、制作チームの準備状況などが目まぐるしく変わる中で、開場・開演のGOサインを出す役割を担えたことは印象深いですね。また、広大な会場の中で自分自身が道に迷ってしまうようなトラブルもありました(笑)
また、本番前にライブ制作の協力会社の方から「初現場でアリーナ級ライブを担当するのは聞いたことないですよ」と言われており、その言葉の重みを実感しましたね。様々なドタバタを乗り越え、大きな失敗なくライブの幕が閉じた瞬間は、本当にほっとしました。
億単位プロジェクトを導くライブPMの魅力とは
ーズバリ、ライブPMの魅力は何でしょうか?
アリーナレベルの大規模ライブや、億単位のプロジェクトを主導できる立場であることです。これだけの規模の事業に20代で深く携われる機会は、なかなかないと思います。発展途上の会社・事業であるが故に、各担当者の業務領域が固定化されておらず、積極的に行動すれば多岐にわたる分野の経験を積むことができます。
ありきたりですが「やりがいを感じやすい」ことも魅力の一つですね。ライブの制作は長期にわたるので大変なことも多いですが、ライブ当日を迎えてファンの熱狂を目の当たりにすると、「今まで頑張ってよかった」と強く思います。自分が関わったライブグッズを手に取り喜ぶファンを見ると「作ったのは僕です!」と言いたくなります(笑)
また、ライブ制作において企画提案はもちろんですが、細かい決め事を決めて前へ進めることもライブPMの重要な役割なので、ある程度決定権を持ってプロジェクトを推進できることにもやりがいを感じています。

ー大規模プロジェクトとなると、多様な関係者の方々とコミュニケーションが必要ですね!
まさに、様々なバックグラウンドをもつ方々と協働できる点も魅力ですね。タレントさんはもちろん、イラストレーターさんや楽曲クリエイターさん、映像制作会社や会場運営に関わる方々など、前職の自分には想像できないほど様々なバックグラウンドを持つ方々と協力しながらライブをつくり上げています。
ー「VTuberの有観客ライブ」という観点で、ライブPMならではのポイントはありますか?
YouTubeなどオンラインを主軸に事業展開するカバーの中では珍しく、ファンとの物理的な距離が近いポジションという点でしょうか。会場現地では、ファンの熱量・行動を目の前に感じることができます。そうしたリアルな温度感を社内に伝えていくことは、ライブPMが担う大切な役割だと思います。
未経験だからこそ「フラットな視点」を武器に
ーエンターテイメント業界未経験だからこそ、ライブ制作で活かせた強みはありましたか?
未経験であることは、むしろ強みに変えられたと考えています。私自身、VTuberのライブやその他のリアルアーティストのライブにも頻繁に足を運ぶタイプではなく、ライブ制作においていわば「フラット」な状態でした。この先入観のなさが、かえって客観的な視点につながったのかもしれません。個人的な好みを脇に置いて、ビジネスとして何が最適かを判断できる。そうした冷静な判断ができることは、未経験者ならではの利点だと感じています。

ー前職での経験が活きたと感じる場面はありましたか?
業務に携わるうえで、「現地現物」の精神を重視しています。これは前職の楽天で、トヨタ出身の役員から学んだ考え方です。
実際に現地に行き、実物を確認することを通して仕事を進める。
その教えを活かし、ライブ当日は物販エリアやファンの待機スペースを観察して、グッズの買い方やどんなものを身に着けていらっしゃるのかを把握するように努めています。業務に直接関係なくても、東京キャラクターストリートのポップアップショップ※などへ時間があるときに足を運び、ファンの様子を観察しています。
※東京駅一番街にあるキャラクターグッズ専門店街『東京キャラクターストリート』にて、「ホロライブプロダクション」の公式ショップ「hololive production official shop in Tokyo Station」を出店中(2024年11月14日(木)~ 2026年春までを予定)
キャリアチェンジ成功のコツは「プライドを捨てる」
ーTさんのように異業種からのキャリアチェンジを考える方へ伝えたいことはありますか?
VTuber業界はまだ未成熟な分野だからこそ、未経験者でも大規模なプロジェクトに主体的に携われる可能性があります。コミュニケーション能力や論理的思考力といった基本的なビジネススキルがあれば、すぐに活躍できる環境があります。
特に大事なのは「素直さ」で、自分が未経験なのは周囲も分かっている状況を逆手に取り、分からないことは何でも聞くような姿勢が必要です。誤解を恐れずに言うと「プライドを捨てる」ことが肝心ですね(笑)
社内外において、様々なバックグラウンドを持つ方々に教えてもらうこと、仕事をお願いすることが多いので、素直さと柔軟なコミュニケーション能力は重要です。
ー誠実さが成長の土台となったのですね。その他ライブPMに必要な要素は何でしょうか?
ライブPMの仕事は「自分の仕事はこれだけ」と線引きする人よりも、様々な領域に興味を持ち、積極的に提案できる人の方が向いています。ライブPMとして制作が円滑に進むようサポートするには、セットリスト、チケット、グッズ、公演ビジュアルなど、各種クリエイティブをはじめ、挙げればキリがないほど幅広い領域に目を配る必要があります。
「知らない・やったことないからできない」ではなく、「どうやったらできるようになるか?どうすればもっとうまくできるか?」を考えられる人が活躍できると思いますね。
また、大規模プロジェクトを成功に導く実績を作りたい方や、世界に大きなインパクトを与える仕事がしたい方にも向いているポジションだと思います。
2024年8月に開催された『hololive English 2nd Concert -Breaking Dimensions-』や2025年2月に開催された『Mori Calliope 2nd Concert “Grimoire”』など、海外のライブにも携わることができます。「英語を使って仕事をしたい」「海外のビジネスに携わりたい」と考えている方にもオススメできます!

世界中をトリコにする、新感覚なVTuberライブの可能性
ーVTuberのライブならではの魅力について聞かせてください。
バーチャルならではの表現の幅広さがありますね。日々新しい演出を取り入れながら、進化を続けるために試行錯誤しています。この強みを生かして、より一層素晴らしい体験をファンの皆様へお届けしていきたいと考えています。
また、会場の一体感も魅力的ですね!タレントさんたちは普段配信活動などバーチャルな舞台で活躍されている分、有観客ライブはタレントさんにもファンの皆様にとっても、同じ場所でともに時間を過ごすことのできる貴重な機会です。
同じ「推し」のもとに集うファンの皆様の連帯感は凄まじく、その熱量にはいつも圧倒されます。そうした熱狂を後押しできるよう、タレントさんとファンの皆様の距離感が少しでも近づくようなライブ制作を今後も心がけていきます。

ーTさんが今後カバーで取り組んでいきたいことを教えてください。
VTuber文化は、世間一般への浸透という点で、まだまだ発展途上だと感じています。会社の中にいると当たり前のようにVTuberの魅力を共有できますが、一般の方々には認知されていない部分が多くあります。今後はより大規模な会場でのライブを通じて、さらに話題性を高め、多くの方々にVTuberライブやVTuberそのものの魅力を知っていただく機会をつくっていきたいですね。
また、英語圏やインドネシア語圏のタレントさんも多数所属しているプロダクションとして、よりグローバルに有観客ライブを展開し、世界中のファンの皆様の期待にも応え、時には期待を超えていくライブを作りたいです。
個人的な目標としては、ライブPMとしてより深く制作面にも関わっていきたいと考えています。ビジネス的な観点を交えながら、アートディレクションやクリエイティブ、演出面においても建設的な提案ができる、希少な人材になることを目指したいです。
ー最後に、等身大のカバーを一言で表すとしたら、どんな言葉を選びますか?
「シンギュラリティ(特異点)」です。VTuberという文化は、一般的な認知度はまだこれからとして、大きな転換期を迎えようとしています。私たちはその変化の最前線にいて、新しいエンターテインメントの形を作り出していく、そんな特別な時期に立ち会えていることを、日々実感しています。
アリーナクラスのライブを次々と成功させ、世界展開も進めながら、まだ見ぬ可能性に挑戦し続けるカバーという組織だからこそ、未経験者でも大きな夢を追いかけられる環境があるのだと思います。今後ライブ展開を加速させるためにも、業界経験の有無を問わず、カバーとともに挑戦したいと思っていただける仲間が増えると嬉しいですね!
ーありがとうございました!VTuber業界という未経験の領域で着実に成果を上げ、カルチャーの拡大に挑戦するTさん。ホロライブプロダクションのライブがこれからどのような進化を遂げるのか、その舞台裏から今後も目が離せません。
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