
ホロライブプロダクション所属タレントの獅白ぼたんさんが主催し、これまでに3回実施されたeスポーツイベント「獅白杯」。
「COVERedge(カバレッジ)」では、この獅白杯を特集。特集第2回では、主催の獅白ぼたんさんと、カバー社員として獅白杯のサポートを担当するSさんにそれぞれインタビュー。
大会運営にかける両者の思いや共創の模様、そして獅白杯のビジネス効果など、さまざまなお話が飛び出しました。
Profile
獅白杯主催 獅白ぼたん
見た目とは裏腹にぐうたらした性格のホワイトライオン。
基本めんどくさがり屋だが、一度決めた事はやり通す誠実な一面もある。
好きな言葉は「採算度外視」。ギャングタウンちほー出身、ゲームプレイはわりと効率厨。強力な回復アイテムは最後まで残すタイプ。
Botan Ch.獅白ぼたん
https://www.youtube.com/channel/UCUKD-uaobj9jiqB-VXt71mA
獅白ぼたんXアカウント
https://x.com/shishirobotan

獅白杯担当 S
ゲーム事業開発室プロダクトチームリード/事業グロースチームプロモーションリード/タレントゲーム企画サポートプランニングディレクター
獅白ぼたんさんインタビュー 獅白杯開催の経緯

―獅白杯の企画が動き出したのは2023年頃とうかがいました。改めて、開催の経緯を教えてください。
2023年後半に、ある企業さんからゲームのイベントにご招待いただき、遊びに行った会場アテンドを担当していたカバーのSさんに案内をしてもらって、「こういう楽しいイベントを自分もやってみたいんですよね」という話をしたのを覚えています。
当時は会社(カバー)が大きくなっていく過渡期で、やりたい企画があってもなかなか実現まで辿りつけないことが多くありました。私はもともと企画を考えるのが好きで、思いついたことをよく提案していたんですが、さまざまな理由でどれも実施に至らず悔しい思いも抱えていたんです。
そうした思いも含めてSさんに話したら、「それ、やりましょう。できます」と力強く言ってくれて。
―その後はどのように進んでいきましたか?
実は、Sさんと話をするよりも前の2023年6月に『STREET FIGHTER 6』が発売され、それが話が進むきっかけになります。当時の自分にとっては珍しい機会だったんですが、『STREET FIGHTER 6(以下、スト6)』を使った外部の大会「CR CUP(Crazy Raccoon Cup リンク:https://crcup.jp/ )」に出場させていただいたんです。
※関連動画:https://www.youtube.com/live/-YlLwsEt0Js?feature=shared
その大会には所属に関係なくさまざまな人が集まっていて、「こういう大会もアリなんだ」と学ぶ機会にもなりましたし、私自身も出場をきっかけにスト6にのめりこんでいきました。
「もし自分主催でイベントができるなら、自分の好きなことをやりたい」と思っていたので、今やるならスト6しかないと考えていました。そんな中、イベントでSさんに「スト6の大会がやりたい」と話をしてみたら、企画が進むことになったんです。話をしてからしばらくは動きがなかったんですが、Sさんから進められることになったと連絡があり、そこから具体的に話を進めることができました。
みんなに「関わってよかった」と思ってもらいたい
―現状第3回まで開催されていますが、大会づくりで大切にしていることを教えてください。
視聴者も出演者も楽しめることですね。視聴者を楽しませたいのは普段の配信と同じですが、出演者に対しては、「大切な時間を使ってくれている」ということを忘れないようにしています。少しでも楽しんでもらえるよう、普段なかなか戦わない人と戦えるようにしたりなどは意識していますね。


―大会の内容や企画に関するアイデアはどのように考えていますか?
毎日ウォーキングの時間をとっていて、歩きながら考えたりしています。「昨日話し合ったあの内容、あれでよかったかなあ」と考えているうちに、別のアイデアが浮かぶことも多いんですよ。それで家に着いてから「あの件なんですけど、これも盛り込んだら面白くなりそうじゃないですか?」って連絡するんです。一緒にやってる人は大変かもしれませんね(笑)。
そういうふうに私が後から思いついたことを、Sさんがうまく企画になじませてくれています。「締め切り前だったら(思いついたことを)かぶせてもいいだろう」の精神で、いつも締切ギリギリまでこだわっちゃいますね。
―獅白杯は緊張感に満ちたトーナメント試合もあれば、笑いの絶えないトーク・エキシビションなど、“ガチ”と“エンジョイ”の両立が毎回絶妙だなと感じています。
正直そこについては、勘でやっている部分もあります(笑)。「これぐらいまで決めておいたら、あとは本番で面白くなりそうかな?」と。トーナメントのオファー枠やエキシビションの参加者に関しては、それも含めて楽しくしてくれそうな方を選ばせていただいています。



―これまでの獅白杯で、主催として悩むことはありましたか?
獅白杯って、関わってくれている人がすごく多いんです。演者さんもそうだし、スタッフさん、制作会社さん、協賛企業さんとか。やるからには、みんなに「関わってよかった」と思ってもらいたい。そう考えたときに、バランスが難しいと感じることはあります。
例えば獅白杯では大会本番の試合前に協賛企業のご紹介パートがあります。私としては全社しっかり紹介していきたいんですが、そうすると合計1時間くらいかかってしまう。でも、視聴者は早く本編の試合が見たいと思うんですよね。
視聴者のことを考えたらスピーディーな紹介にしたいけど、協賛してくださっている企業さんのことを考えたら、その紹介や企画をもっとがっつりやりたい。そこのバランスは、今も悩んでいるところです。
獅白杯は「伸びしろの塊」
―ぼたんさん個人にとって、獅白杯を通して得られたものを教えてください。
獅白杯そのものが「獅白ぼたんはこういうことができます」という実績を伝えられる場になっていて、やってきてよかったことかなと思っています。多くの方に知っていただく機会にもなっていますし、今後も続けられる限りは続けていきたいですね。
―最後に、ぼたんさんにとって、獅白杯とは?を教えていただけますか。
一言で言うと、「伸びしろの塊」です。今後、もし興味を持ってくれる企業さんがいたら、獅白杯を使って何か一緒にやりたいんですよ。それは大会協賛に限りませんし、もっといえばゲームタイトルも「スト6」に限りません。獅白杯は冠の大会名ではありますが、他のゲームタイトルを使ったりしても良いと思っています。「私が好きなものであること」が大前提になってきますが(笑)。
もっともっと「獅白杯」をいろんなことに使ってもらいたいなと思っているので、私と一緒に何かやりたい企業さんはぜひご連絡ください!
Sさんインタビュー:獅白杯を実現するための影の奔走
―前半の獅白ぼたんさんインタビューでは、「Sさんに『やりましょう』と言ってもらえた」というお話がありました。こちらのエピソードについて、Sさん側のお話もうかがえますか?
私は前職でプロモーションプランナーをしていて、アニメやゲームのIPをお借りしたプロモーションプランニング業務をしていました。加えてeスポーツ事業の立上げにも携わっていたので、たまたまeスポーツの知見と、コンテンツをプロモーションに落とし込む素地のようなものを持っていたんです。
―獅白杯をサポートするにあたって、ぴったりのご経験をお持ちだったんですね。
ちなみにカバーに入社を決めた 転職した理由は、コンテンツホルダー側に行ったらもっと面白いことができるかもしれないと考えたからです。それに関しては、私も本当に運がよかったなと思います。
―とはいえ、実現にあたっては社内調整などが必要だと思います。社内へはどのように働きかけていましたか?
現在、ホロライブプロダクションには約90名※のタレントさんが在籍しています。会社として運営している以上、売上を上げなければならない一方でリソースは無限ではありません。また、タレントさんはタレントさんでやりたいことを抱えていながらも、普段の配信や記念・企画配信の準備などで常に多忙でもあります。「獅白杯」が立ち上がった2023年時点では、お互いのリソースの壁を超えて、どのように会社がサポートの幅を広げていくことができるか、という課題を抱えていました。
※2025年6月時点
そこで、「タレント本人たちが自発的にやっていること、やりたいことをビジネス化できれば、従来の案件とは違う方法で売上を立てられるんじゃないか」というロジックを立て、上司に持っていきました。そうすることで、タレントはやりたいことができるし、会社としても売上があればその分リソースをつけることができて、win-winになるんですよね。今回であれば、獅白杯という形でぼたんさんのやりたいことを実現しつつ、そこに協賛をつけてマネタイズするイメージです。
幸い当時の自分は営業の部署にいたので、仲の良い企業に頭出しをして感触をもらいながら、ある程度予算プランも立てた状態で社内提案に進められました。そして、第1回からきちんとマネタイズさせることを条件に、会社からの承認が下りたという流れです。ぼたんさんがインタビューで「(最初に話をしたイベントの後)しばらくは特に動きがなかった」と仰っていましたが、あれは私が社内を説得していた期間なんです(笑)。
ー実際に第1回獅白杯を終えたときの、社内の反応はいかがでしたか?
おおむね好評でしたね。複数の企業と一緒にひとつのコンテンツを作り上げてエンタメに昇華させながら、実利もあるし、タレントさんもやりたいことがやれる。今までにない新しい案件の形を見せられたという意味で、意義ある事例になれたかなと思っています。
ー視聴者のエンゲージメントの面では、どのような波及効果が見られましたか?
ぼたんさんのファンは温かい方が多く、協賛企業の発表すらも全力で楽しんでくれていて驚きましたね。
我々としては協賛企業の商品や取り組みの紹介をただの PR(宣伝) で終わらせず、きちんとエンタメに昇華することで、ファンの方々が受け入れやすくなるような設計を心掛けています。大会までの期間にしっかりとムーブメントを起こし、本番中も見ていて面白い訴求ができるように落とし込む。
それがきちんと作用できているのかなと思いつつ、「それにしてもこんなに好意的に受け入れてくれるとは」と、毎回不思議な気持ちで視聴者さんの反応を見ています。
タレントの「やりたい」をできる限り叶える
―獅白杯の準備にあたって、獅白ぼたんさんとカバーの業務分担はどのようになっていますか?
簡単に言うと「企画:獅白ぼたん、その他:会社」です。ぼたんさんにやりたいことをどんどん話していただき、ビジネスとして実現できそうなものについて会社が動きます。スケジュール管理や制作進行なども担当ですね。
―実現したアイデアの中で大変だったものはありましたか?
第2回からエキシビションを行うようになったのですが、その中に生身の演者を対象とする罰ゲームコーナーがあります。生身の演者を写す際は、技術的に映せる部分と映せない部分が存在するので、毎回画作りが難しいですね。あとは細かい話ですが、罰ゲームに使う小道具をセッティングする時間をどうやってもたせるか、など演出面の悩みもあります。
また、第3回ではティザームービーを用意しました。最初は、公募選出の配信中に決定した出場者をリアルタイムで入れ込み、配信直後にムービーを公開したいとぼたんさんから要望があったのですが、その時点で制作期間が足りなかったため、「代わりに大会本番1週間前に、最後の盛り上げとして出すのはいかがでしょうか?」と提案し、なんとか無事に間に合わせることができました。
▼ティザームービー
ぼたんさんが最初に思い描いた形通りにいかなくとも、妥協点を探ってなんとか形にする。そうして「こういう形ならできます。やりますか?やりませんか?」と投げかけ、最終的なやる・やらないをぼたんさん自身が決められるようにしたいんです。
―獅白杯は半年に1回のペースで開催し、第3回まで続いていますが、最初のころと比べてぼたんさんとの連携に変化はありましたか?
チャットツールでの確認など、やり取りのラリーが減って、ぼたんさんが許容してくれるラインがつかめてきたことで、スピードが上がった実感があります。
また、回を増すごとにぼたんさんからいただく要望が増えていて、これは「私たちに要望を言いやすい関係性が構築できてきたのかな」とポジティブにとらえています。こちらの返事が「あれもできません、これもできません」だとどんどん頼みづらくなってしまうと思うので、要望を言ってもらえるうちは、対応できているということかなと。
タレント主催のイベントの強み
―獅白杯はじめタレントさんが主催するイベントについて、ビジネス面の期待感についてお聞かせください。
企業がVTuberを活用したりコラボする意義は、その人が持つ影響力を活用したり、 その人を推しているファンに製品やサービスの魅力をリーチさせたりできる点にあると思っています。その際、ファンがどれだけ好意的に受け入れることができるか、ここが重要なポイントです。
獅白杯のようなタレント主導の取り組みの場合、通常のPR配信と異なるメリットとして、「協賛企業がタレントをサポートしている」という座組で露出できることです。ファン視点では、より好意的に企業を受け入れてもらいやすい土壌が生まれているでしょう。
―その際、カバーにはどんな役割が求められると考えていますか?
協賛企業とタレント、あるいは協賛企業とカバーの関わり方が、より密接になっていく所を見せられると、もっとスケールアップできるのではないかと思っています。PRとして商品やコンテンツを紹介する際にも、ただ依頼を引き受けて「クライアントがやってほしいことをやる」ではなく、もっと別の形・新しい形もあるということを我々が示していく必要があると思っています。
VTuberというまだ新しい文化に対して様々な企業が理解を示し、私たちは配信を通じていただいた以上の成果をお返しすることによって、お互いwin-winの関係を築いていきたいですね。それを続けていくことで、「よそでこれだけ効果が出たなら、うちもタレントのサポートとして(協賛に)入ってみようかな」という企業も増えるのではないでしょうか。
良くも悪くも協賛には、スポンサードメニューさえ選べば協賛企業としてスタートできるという手軽さがあります。もし企業がVTuberをよく知らなくても、一度獅白杯で試してみていただいて、そこから正式にクライアントになっていただくパターンもあり得ると思います。
ー企業にとって、獅白杯がVTuber起用の入口になれたら良いですね。最後は、ぼたんさんと同じ質問です。あなたにとって獅白杯とは?
「ぼたんさんのやりたいことが詰まっている場所」、でしょうか。私含め獅白杯に携わっているスタッフは全員、ぼたんさんがやりたいことをどれだけ叶えてあげられるかという点に全力を注いでいます。
獅白杯では、特に反省会のようなものをしていないんです。1回終わったらすぐに次の準備が始まって、その中で「前回できなかったこれ、もう1回チャレンジしてみませんか?」「前回はこうだったけど、今回差別化するとしたらどんなことをしたいですか?」という会話がどんどん交わされるから、反省する間もなくすべてが糧になっているんですよね。
3回目でようやく叶ったこともありますし、今できていないことでこれから形になっていくこともたくさんあると思います。ぼたんさんが思い描く獅白杯がどうなっていくのか、私も楽しみです。

次回:社外にも広がる、タレントとの共創
今回は、獅白杯主催の獅白ぼたんさんとカバー担当者のSさんにお話をうかがいました。ぼたんさんの思い描くエンタメに共感し獅白杯を支えているのは、カバーだけではありません。特集の第三回では、関わってくださっている各企業さまのコメントをお届けします。
©CAPCOM
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